○宇宙ロケットはそれほどの技術ではない
宇宙ロケットの目的は、貨物を宇宙空間へ運ぶことでしかありません。荷物によって、地球軌道上に運ぶだけか、そこから更に軌道外へ打ち出すかなどの運び方に差はありますが、基本的には上空200キロメートルから3万キロメートルまでまたはそれ以上の差はありますが、宇宙空間に運ぶだけです。ただ宇宙空間に到達し、滞在するには荷物を加速させる必要があるだけで、機能としては自動運転のトラックと何ら変わりはありません。
その単純な目的ために、実は無人の宇宙ロケットは大した高度な技術を必要としていません。ここで無人と限定したのは、宇宙空間に人間を運ぶのにはとて大変な技術であって、それは全く別の技術になるからです。
ロケットを無人と限定すれば、必要な主要技術としては、(1)エンジンの推進薬とノズル設計技術、(2)飛行中の姿勢や速度、機体の位置計測のための管制システム、(3)姿勢制御と機動のための姿勢制御システム、(4)機体の状態を地上に送り地上からの司令を受ける通信システム、(5)時間通りに切り離しや着火などの各機器を作動させるプロセス管理システムなどがありますが、それぞれそれほどの超高速な信号処理も機械動作も必要としません。最も高速な処理を必要とする処理は、機体のロール制御ではないかと思いますが、それでもどう早く考えても200Hzくらいで運動の発散を制御するには十分であり、それは例えれば普通に使われている自動車のエアバック展開システムと同程度であり、その程度の制御機構を構築するには最新の高性能な部品は必要ではありません。その他の技術にしても航空機などで使用された枯れた技術の範囲で得られる程度の技術に過ぎません。ロケットの原理や機構は、空気というわけのわからないものと格闘し、人間という軟弱なシステムと格闘した航空機と違って、フォン・ブラウンのV2ロケットがそのまま今でも通用する技術なのです。

 

○何故宇宙ロケットが難しいか
では何故、ホリエモンロケットを始めとする民間ベンチャーの作る宇宙ロケットが中々モノにならないかといますと、宇宙ロケットの目的に起因した宿命が有るからです。第1に無人でありかつ発射したら破壊されないでの回収が不可能であるために、故障が発生した場合ほぼ修理ができないという問題です。第2に宇宙まで運搬する荷物が手作りの精密機械で重量単価なら金より高い異様に高価な衛星だとことです。
この2点から解るのは、宇宙ロケットに何よりも必要とされるの能力は、運搬ペイロードや推進力などではなく、発射してから廃棄されるまでの間に故障が発生しないということ、つまり信頼性ということになります。
この信頼性にも種類がありまして、大きく分けるとこう製品信頼性と製造工程の信頼性になります。具体的には、ロケットを構成するチップや機械などすべての部品の信頼性と、それをロケット内に設置して組み立てや配線する工程において設計どおりでミスがないという信頼性ということになります。
宇宙では、自動車の衝突事故のような大きな衝撃はありませんので、頑丈さ自体は必要はありませんが、振動や熱などは間違い開く発生しますので、予想される振動温度衝撃では絶対に壊れないという耐環境信頼性が必要です。これを各々達成するためには、方法は一つしかありません。
部品に関しては、設計製造でいくら精密化しても必ず製品にバラツキが発生しますので、その努力は確実性に効果的ではありません。つまり、製品に対して徹底したスクリーニングを実施するしか方法はありません。具体的にはそれは、多量の部品を振動装置や熱環境負荷装置にかけて、全く動作が不安定にならない部品を1個または数個だけ選び出す方法です。予想される振動や温度環境になるか、任務信頼度をどのくらいまで追求するかによりますが、大量の部品や製品を破壊することになり、無駄にすることになります。
一方、組み立てや製造加工の信頼性については、部品のスクリーニングに当たるものは、徹底的な作業員訓練と、その上で訓練された作業員の中から最高技能者をロケット組み立ての作業従事者として選別する選抜作業ということになります。ロケット製造には多数の部品と多様な作業が存在するために、部品のスクリーニングも高技能者の育成も大変費用がかかる行為になります。そしてそのノウハウを知る企業しか作れないということになります。

 

○製造とはなにか
ここでは部品の耐性について記載したが、全ての製品設計においても、設計がどんなに精密であっても、製造において工程上でどの工程、どの構成部品の品質が性能実現に対して重要かを認識しなくては、製品が想定通りの性能を発揮するものにはならない。それを掌握するノウハウこそが製造業の能力であり、それを認識することが製品プロデュースの大原則である。

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○電気自動車ベンチャーへの期待
一時、と言っても数年前まで、電気自動車開発のベンチャーがたくさん立ち上がりありました。それは、当時というか今でもメディアが盛んに言っているこの事が原因でした。それは、日本において1970年以降に起業した自動車メーカーは光岡自動車1社であり新陳代謝が全くなされていないが、環境問題により電気自動車が必要とされる時代になり、エンジン設計がいらなく電気配線だけで走れる事になり、電気関係の企業を始め様々な企業が自動車産業に参入できる道がひらけたという内容です。これに、米国におけるGoogleやアップルの自動運転アルゴリズムを武器とした自動車製造参入の話もあり、また、欧州や日本における電気自動車による超小型モビリティ構想などがあって、ベンチャーの参入障壁が低くなったように見えました。
特に国土交通省が推進する「地域交通グリーン化事業」に対応する超小型モビリティ構想は、公道走行を可能とする認定制度を創設し、地方自治体、観光・流通関係事業者等の主導による超小型モビリティの先導・試行導入の優れた取組みを重点的に支援することにより、地域の電気自動車の積極採用に希望が見られました。

 

○電気自動車ベンチャーの障壁
しかし現在、家電企業に自動車会社になれというアドバイザーはどこにもいません。これは何故でしょう。
自動車開発には困難な点が2つあります。一つは、簡単に走っているように見える自動車は実は大変高度な技術で走っているということと、もう一つは自動車が多くの犠牲者を生み続ける許容されている社会という面があり、存在し続けるためには、常に交通における安全性確保に向き合っていなくてはならず、その約束として道路運送車両法に基づき自動車製造には型式認証制度、運行には車両検査などの遵守が求められています。
1つ目ですが、実は4輪自動車の4輪をちゃんと真っ直ぐ走るように左右均等荷重で接地させることや、様々な路面の凹凸や傾斜地があっても4輪の接地性が維持されるように設計することは、車体の剛性や弾性、共振特性など多様な要素解析が必要になり、設計は高度なノウハウであり、かんたんに台車にエンジンと座席というわけには行かないということです。
2つ目ですが、人の命に関わる規制を緩和させることは容易ではないということがあります。シティコミュータとしての超小型モビリティ事業がありましたが、そこで安全性に関わる強度条件の緩和がありましたが、それでも2人乗りの軽自動車扱いのものは、既存の軽トラックなどに比してとても採算がとれるような価格にはなりませんでした。時速5kmを越える4輪自動車の新たな規格はできそうもありません。超小型モビリティでもそうなのですから、軽自動車以上の車の新規開発は困難さがつきまといます。

 

○ベンチャーの電気自動車への道
このような規制をベンチャーが自力で克服するこは困難であり、高いハードルへの資本注入は非効率ですので、他社から技術導入するか、何らかの規制緩和の手段を探すかの対策が必要でしょう。
まず、技術導入でについては、現在の軽自動車以上の規格を実現するためには最低限フレームかシャシーの購入か能力次第では設計ソフトの導入が必要でしょう。シャーシやフレームは開発能力がある企業に依頼し、ベンチャーはあくまでも運用の構想と構想に適合したヒューマンインタフェースやソフトウェアに注力することが効率的な構想実現の方策でしょう。
次の規制緩和ですが、構想する自動車システムがシティコミューターなどで性能や規格が超小型モビリティで適合可能ならば、構想に適合する規制のゆるい超小型モビリティを設計し、地方自治体と共同事業で、特区を設定してもらい、高齢者用の移動手段、ガソリンスタンド廃止対策、観光用カートなどとして立ち上げることもあり得るでしょう。

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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