○女流日記文学
おもな日記文学は成立順に、『土佐日記』→『蜻蛉日記』→『枕草子』→『和泉式部日記』→『紫式部日記』→『更級日記』→『讃岐典侍日記』→『建礼門院日記』→『十六夜日記』となりますが、平安文学、それも宮廷サロンなどで繰り広げられた女流文学となりますと蜻蛉日記から更級日記までが一連というところでしょう。

 

○上東院彰子サロン
女流日記文学といえば蜻蛉日記、更級日記、和泉式部日記、紫式部日記の4作品ですが、それぞれに方向性や性格が全く違うのに気が付きます。当時の紙の事情とすると、従来の溜め漉きの技法に加えて、流し漉きの技法が開発され生産量が爆発的に増加し、それによって紙を使って、中宮などのサロンがその文化度を宮廷内での評判や書写数などで競っていたのかもしれませんし、夫々に目的と位置づけが異なるものが残ったのかもしれません。もしかすると女房たちの中には書いてみたが消え去った作品があるのかもしれません。
話をもとに戻しますと、この4日記は時代順に、蜻蛉日記、和泉式部日記、紫式部日記、更級日記となります。この前3つは明確に藤原氏に関係するものであり、孝標の娘にしても頼通とのパトロン関係が疑われています。これは蜻蛉日記の存在が、兼家の権威の伸長や誇示に役に立ったので、道隆、道長がその後も中宮のサロンを使った権威の誇示に女流文学の伝布というものを利用したということかもしれません。
日記と言われますが、この紫式部日記を除く3作品はいずれも日々の諸事を記録する日記とは言い難く、自己の感情や人間性を明確に押し出して文字通りもののあわれを語ります。これは源氏物語とつながることも多く、多分当時でも、ほとんどの人は物語として読みそして書写をしていたのだと思います。

 

○蜻蛉日記
蜻蛉日記は藤原道綱母の作品です。この頃の女性は直系で母、娘で示すか、父親の職位や渾名で示すかですが、藤原家の隆盛を築いた藤原兼家の第2夫人であり、その隆盛を見た人物でもあります。その蜻蛉日記は明確に源氏物語の縮小版であり、権勢を求めて貴族社会を駆け上っていく兼家、そしてその豪腕家故の自己中心的な行動に心身ともに振り回される彼を取り巻く女性達。女性陣にも筆者という本朝3美人で和歌の達人という出自以外は最高の女性を中心において、正妻であり後の藤原の権力の頂点を極める道隆、道長兄弟を生んだ時姫や帝の系統でありながら認められず育ちの故か軽薄な行動をする町の小路の女などを据えて、女性の有り様からの源氏でいう「もののあわれ」を描いています。

 

○和泉式部日記 
敦道親王の正妻は道隆の三女、後妻は道隆の盟友である藤原済時の中の君、前半は敦道親王との和歌のやり取りで、後年の常識になっている敦道親王の和歌の才を示しているが、その中でその才を引き出したのが和泉式部との文の遣り取りであった。特に、日記内では手枕の袖の歌を引きだした経緯がのが、和泉式部の和歌の能力であることを明確にわかるように書かれています。また後半は、和歌を書かずに敦道親王の正妻である道隆側の藤原済時の次女との確執とその異常さが物語的に書かれています。

 

○更級日記
受領階級で田舎で育ち内親王の乳母を目標にしていた孝標女ですが、その血縁を見ると、父型の曽祖父は道真で母方の伯母は道綱母です。その才能は抜群であり、平安後期のこの時期に書かれたとされる物語の写本ではなくて伝聞や転載情報が出るたびに、その作者第一候補は必ず菅原孝標女です。多分確実だとせれているのは、孝標の女が大好きな源氏の続きを書こうとしたのかと言われている『浜松中納言物語』と『夜半の寝覚』があります。

 

○紫式部日記
紫式部日記は多くの女流作家の批評で有名ですが、実際その主体は中宮彰子の第一子の出産の記録です。道長がどのように出産を待ちわびたか、一条天皇がどのくらい喜んだかを記録することで、長徳の変を始めとする一条天皇と中宮定子を巡る様々な宮中の問題を全て払拭され、新しい秩序だった宮中の完成を明示しているのだと思います。
紫式部日記は他の女房、特に清少納言に対する辛辣さが有名ですが、これには理由があります。清少納言の教養を最も示す場面に香炉峰の雪があります。この分は白居易の七言律詩の一部で漢文ですが、もうその当時ひらがなが行き渡って普通女性はひらがな書きの和文が一般教養なのに、清少納言は漢詩、多分当時の教養人のトップである藤原公任の和漢朗詠集を読んで、漢詩を教養にしていたということでしょう。一方、紫式部の源氏を読むと、各所に日本書紀の引用が見えます。ここで日本書紀ですが、古事記と併せて記紀と言われていますが、漢字を使った和文で書かれた古事記と異なり、日本書紀は正史であり国の正規文書として漢文で書かれています。つまり、当時の漢文の最も重要な書物は日本書紀なのです。漢文の素養があれば物事を記載しようとすれば必ず日本書紀が出てくるはずなのです。つまり、漢文を当然の教養として身につけた紫式部が、漢詩、それも多分原典ではなく和漢朗詠集の漢詩の知識をプライドにする清少納言に対し、強い違和感を持つのは当然なのです。そして源氏の中で光源氏に語らせる物語論は、事実を超越する虚構によって、それにまさる人間の真実を追求することが目的であり、蜻蛉日記であっても、和泉式部日記であっても自らの境遇を素材にして人間を描いたものであり、それこそが日記文学を中心とする女性文学、特に紫式部の文学意識そのもので、随筆である枕草子では真実は書かれないということでしょう。後年、本居宣長が「もののあわれ」と表した源氏の真実性に対して、枕草子の「いとおかし」の人間洞察の差を、明確に主張したのとも考えられます。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○5Gとは
5Gとは第5世代無線データ通信規格のことであり、あくまでも携帯通信の電波通信の規格の時代区分に過ぎないものです。通信には送受信機間の信号の同期が必要で、いくつかの通信規格の設定が必要になります。そのうち最も重要で最初に決めなくてはいけないものが電波周波数であり、5G規格には、3.5 GHz帯および4.5 GHz帯と28GHz帯の電波が割り当てられています。
携帯電話の電波は基地局で受信されて、ノードなどを経て光など有線回線で相手と交信している基地局に運ばれて、そこからまた電波になって相手の携帯に送信されます。5Gとは携帯電話等の無線通信部分の規格になります。実際のデータ搬送する距離の殆どはノード間を光ファイバー中を移動することになります。5Gの後継は6Gで周波数は300GHzから1000GHzでミリ波とテラヘルツということになりますが、これは光通信に近く果たして到達距離として屋外無線通信規格として実用になるのかわかりません。

 

○周波数の重要性
5Gのアーキテクチャの標準化は3GPPなどの遅延によりまだ決められていません。ただ、周波数を決めなくては中継局の整備などができないために、先に周波数帯だけが決めれれていています。数が5Gで特徴的なのは28GHz帯であり、4Gの主体である800MHz帯の30倍以上の高周波数ということになります。ここで周波数と言われているものは搬送波の周波数であり、この送信電波をある時間間隔でオンオフをスイッチングします。このオンを信号の1、オフを0の信号とすることでデータ作成する材料になります。受ける受信機はこの送信搬送波に受信周波数を同調させ、受信電力の有る無し観察し続け、信号の検知非検知のタイミングを時間チャートでカウントして、送信データを再現します。でることで1ビットに必ず周波数の波が含まれていないと0で信号がないのか波が節のところにあって検知されないのかわからないために周波数は信号を送る速さに直結することがわかります。

 

○5Gの最も重要な所
5G通信では高周波数で回折や減衰の大きい搬送波の送受信のための基地局建設の問題が言われていますが、実は5Gの最大の問題は莫大に増加する基地局間トラフィックの極限化にあります。高速通信や大量通信が可能な状態で、そのまま現状のすべてインターネット回線に載せるというIOTの使い方をしていれば、その分の基地間光ファイバー網を通過するデータ量が増加し、途中のDSUやサーバーが過剰負荷になり、結果としてパケット化の待ち時間が発生し逆に通信速度が下がることが考えられます。

 

○5Gの本当の技術
トラフィックの問題でもわかるように、5Gが克服するための技術は通信速度ではなく、通信の多様化にあります。全てのデータ通信をWWBのような基幹を通さないで各段階で必要な処理をして、必要な場所で必要な通信速度を確保できる通信網を構築することにあります。
・エッジ・コンピューティング
トラフィックを減らすためには、端末自身や端末付近の基地局で膨大なデータを処理して必要なデータを必要な頻度でWEBに載せるように管理する必要があります。そのためにはある程度のAIなどの演算機能、自己ストレージやWEB以外のサーバー機能やストレージを各機器が持つ必要があります。
そのWEBデータについてもAIによって、WEBへのアクセス量が集中しないでできるだけ平均化するように、頻繁にアクセスする必要データを予測して事前にデータをターミナル側のストレージに保存することでアクセスを分散させるようなシステムが必要になるのではないでしょうか。アクセスが集中して遅延が生じることを防止するための技術や、例えば端末のセンサーがセンシングしたデータを無線で送る場合でも、圧縮可能なデータはターミナル側で事前に圧縮してから送信機に送る技術が必要になると思います。
・アドホックネットワーク
また、自動運転時の前方の車両の異常挙動など、データを交換したい相手が電波到達距離にあれば、ネットはおろか基地局も介さないで相互通信したり、基地局内にあれば基地局をスルーアウトするだけの通信も回線のトラフィックの極限に有効であり、また、個々の端末はキャッシュされているサイトデータなどを近傍のサーバーでブロックチェーン化して、WEBを介さないでそのキャッシュを利用するような個々の端末をサーバー化するシステムが有効であると思います。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○正法眼蔵とは
・正法について
正法とはそのまま正しい教えのことです。釈尊が伝えようとした正しい教えです。この正法について禅宗では、釈尊が後継者の摩訶迦葉に以心伝心でその教を伝えたということがあります。釈尊の説法は経典としてたくさん残っていますが、それは個々の信者や弟子に対して導いたものであり。いわば個々の理解に合わせた方便ということになります。方便であるために経典により多少の齟齬、矛盾が生じます。釈尊の悟った真理は唯一摩訶迦葉に伝わった正法のみということになります。
以降の仏教の宗派の歴史の主流が万人救済とともに正法の探求つまり正法眼藏を求めての競争であり変遷ということになります。
この探求が法相宗では、唯識における五感と自我の認識たる意識を超える認識たる第八阿頼耶識を生じたとも言えますし、密教はその唯識を超えて、方便たる仏教を言葉で説明するための顕教に過ぎないとしてひとくくりにして、正法はそもそも言葉では認識できない密教の範疇であり修行によりのみ体得し得るものとし、修行によりました。
しかしながら道元は、そのことに疑問を持ったようです。確かに只管打坐によって感じられる世界ではあるが、身につけた感覚や知恵を言葉に出来ないようでそれを正しく身に着けたと得るのでしょうか。多くの例えや表現を駆使して表してこその体得と言えるのではないでしょうかということだと思います。そこで道元は実技書の普勧坐禅儀を示して後に100巻の大著を用いて正法を言葉で表そうとしたということでしょう。

 

○有時の哲学性について
・正法眼蔵が哲学と言われる所以
仏教において多くの経典がある中で、唯一正法眼藏のみが哲学書と言われる所以は、平易な言葉で具体的に多様な表現により人間を表したところにあります。特に存在である「有」と時間の流れという意味の「時」の関係に関して示した有時の巻において存在するとは何かを示したところは、多くの人からハイデガーなどとの比較をされているところです。
・有と時の不分性と不確定性
道元の言う存在と時間の不可分性は、存在なくして時間なし、時間なくして存在なしといったところにあります。このことは一般的に考える時間の停止と存在と大きく異なります。時間の停止は変化の停止に過ぎないで、そのものはそこにそのままあり続けるという認識が普通です。道元は過去や未来の時間は物がそこにある要素の全てであり、時間の停止は存在そのものの消失といいます。その言い方が意味は違いますがまるで量子力学の不確定性原理であり、感覚の最新性を感じます。
・過去と現在の同一性
時間は過去、現在、未来があり、その量的な割合を見ると、現在は刹那という不確実な瞬間であり、時間の多くは大きく横たわる過去と未来であるという感覚が普通ですが、道元は全ての時間の現在性を示しています。道元の因果律である因果不二では、過去はあくまでも現在思う過去であり、それは過去において見聞し身につけた過去であり、現在の存在を組みててている構成要素になっています。未来も独立した存在ではなく、現在の存在を因とした結果でありそれも現在の存在の構成要素です。その意味で過去も未来も現在の存在なくしては存在し得ない因であり果であり、過去を過去として固定することも、現在から過去を分離することもできないという意味でも、時間を停止することは自己の存在を否定することになるわけです。
・有時から見た世界ということ
このことは世界という空間からも同じことが言えます。過去にある場所にいて認識していたものがその時点の世界であることから、世界もまた有と言われ果である現存在の因であり構成要素であると言えます。その意味で世界は存在の認識であり、空間もまた認識であることになります。

 

 

 

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中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○日本の四季
・四季がある条件
日本は季節がある国です。それを日本の特徴とする人がいますが、緯度が±35度より極に近い土地には大体四季があります。これが四季があることの条件の一つです。また、内陸でないこと。内陸の場合、風による大気の移動が少ないこと、比熱が低くく、また雲ができにくいため熱放射がによる放射冷却が大きいために、寒暖差が大きくなり一日の間に夏と冬があるという環境になり、1年を分割する季節という感覚にはなりにくい。そういう意味で季節は海洋性の気候が必要です。また、季節が変わるという感覚は、国内に少なからずの時間差があるほうが感じやすいので、南北に長さがあるか、平地と山地が接近している方が季節を認識しやすいでしょう。
・36度±23.4度の効果
25度以上と言ったのは、赤道付近では季節による日射量の変化が少ないため、季節変化を細かく分解することができないからです。また35度付近が良いと言ったのは、北緯45度付近の最も投影面積変更が季節による日射量変化が大きいが、北緯45度になると12月から2月までは氷点下で、季節感が固定してしまうため、また降雪があるのであまり温度が下がらない。季節感があるのは最低が0℃以上である北緯35度程度だと考えます。
その結果として夏の日射と冬の日射の熱量の差が大きく、陸上の温度上昇の差が大きくなり、地面の温度の影響が大きい気温の低下と、より一層日照が減少し高緯度からの寒気が流入を起こします。
・夏の期間を圧縮する雨期がある。
日本の5月は日照入射角度的には亜熱帯であり、通常の天気周期ならば5月の中旬から夏の気温になるはずであるが、日本には6月早々、西日本では5月中から梅雨入りして、雲による日照の遮蔽と降雨による地上の冷却が発生します。雨天では晴天に比して1日の平均気温は5度から10度の低下が見られます。よく言われる月の平均気温の前年同月比較での上下は単に雨天の回数だったりします。このように梅雨の存在は夏の到来を遅らせます。同様に9月は未だに海水温は最高水温であり底から来る南風の存在は通常ならば10月半ばまで真夏の気温をもたらします。しかしながら秋雨前線の活動は梅雨の場合と同様に雲と雨で気温を引き下げ秋雨は夏の終りを早める効果があります。梅雨と秋雨は日本の夏を削って、他国ではありえない長い春と秋を形成していると思われます。

 

○日本の雨季
雨季というと熱帯性の雨季をイメージする事が多いですが、熱帯の雨季は単に日射で熱せられた水蒸気が夜間に冷えた陸上の山などにぶつかって雲を形成し雨になり、日射により地上が温められると雲が消失するようなもので日本の亜熱帯や温帯の雨季は違います。
日本には雨期が3回あります。そして夫々の中心となる地方が違います。まず、6月から7月の梅雨でこの中心は西日本です。これは太平洋高気圧が北上するときに東海道の長い海岸線で一旦止まり、大陸から伸びてくるジェット気流が形成する停滞前線に接続して巨大な降水帯となるからです。太平洋高気圧が北上し列島を覆うことで消えた前線は、逆に秋になるとシベリア高気圧とオホーツク高気圧に押されて気圧の谷が南下する時は太平洋の北で太平洋高気圧と移動性高気圧によって止められます。そこで長野や北関東に前線が停滞します。
もう一つの雨期は冬の北陸から秋田までの豪雪です。シベリア高気圧は東アジアに乾燥した寒気を北風としてもたらしますが、日本についてのみ海洋を超えているために北風が湿潤な風になります。

 

○梅雨の正体
梅雨の西日本が豪雨災害になる理由は、その前線の南北の温度環境が明確に違うところにあります。日本の梅雨は、東アジア全体に前線帯が停滞することで起こります。梅雨期には、亜熱帯ジェットがチベット高原の南側を、寒帯前線ジェット気流が北側を通ります。亜熱帯ジェット気流は山脈を過ぎて時点で平行している北側の寒帯前線ジェットのトラフと相互作用することになります。そのジェット気流の速度のために,そのトラフは対流圏中層まで達する正渦度をもつ長さ2000kmスケールの梅雨前線となり連続して低気圧をその線上に発生することになります。その結果この低気圧の後面では、梅雨前線に沿って連続した雲列が形成されるます。
つまり梅雨前線は、通常は地上まで達しないで、地上に前線を作らないはずの亜熱帯ジェット気流の偏西風が地上まで達することによりその高緯度側に降水帯が形成され、かつ地上の前線帯の下層では梅雨前線帯に向かって低緯度側からの風の吹き込みがあり、この風が亜熱帯高気圧の西縁の海洋性の気流であり、前線帯に連続して水蒸気を供給すると共に、その吹込みが前線帯に沿った風と合流収束することで、前線が常に強化され続けるという珍しい長時間連続降水機構を作り上げます。40日間全く日照がなく大量に降水するという珍しい機構が出来上がります。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○SDGsに関する誤解
・環境問題ではない
SDGsを環境問題化しようとしているグループはたくさんあります。サステナブルという言葉が環境による生物や人間の生活環境悪化を想像させるため、各種の環境悪化要因を排除する運動を目標に掲げる可能性がありますが、現状を排除する過激な計画は社会や経済システムの継続性の分断であり持続性を破壊する行為はである可能性が高いと思います。
・食糧危機ではない
飢餓問題を食料問題とすり替えている場合が多いです。食料は一定量を世界で奪い合っているものではありません。食糧増産には年単位での計画期間が必要であるため、当該年度での食糧不足があると価格高騰により途上国での確保が困難になりますが、これは事故であり食糧問題ではありません。食料生産は、生産量と消費量のバランスを販売価格と生産価格の差である生産者利益を極大に確保するように生産調整されます。持続性とは取りも直さず生産者利益を確保するための生産量拡大を継続することに他なりません。決して一定食料を先進国消費分から途上国消費用に配分再編することではありません。
・現状否定ではない
現在の社会は人間の行為により持続性不可能な社会になっているという主張でもなければ、社会を否定して持続性を獲得するためには変革を主張する計画ではありません。持続性は成長であり、現状の産業や消費経済の成長なくして成長を維持することはできません。節約して経済を縮小することは持続性の喪失に直結してしまいます。あくまでも現状の社会を維持した上での開発、成長です。

 

○UNDFのSDGsを見てみると
UNDFのSDGsを見ると何に注視しているのかなんとなくわかってきます。それは国連のほとんどであり多数主体である途上国が何に困っていて、G20なら20カ国、OECDなら38カ国と言われる先進国に一体何を要求しているかということの表明に他なりません。いくつかを見てみます。
・貧困問題
貧困という表現は食料、飲料、衛生、その他ライフラインインフラの欠損状態を総括して示しています。その中でも基準を1日の可処分が1ドル25セント以下という基準で見た場合の集団を貧困問題を有する社会集団ということにしています。あくまでも社会集団という意味での貧困であり、途上国民が所得を得られる社会にするという意味であって、先進国は金を渡せという意味ではありません。
・飢餓問題
UNDFはこの飢餓問題を単なる食糧問題としてみてはいないません。ここの飢餓とは飢饉のことを示しています。先進国では飢饉という意識は感覚的にありませんが、旱魃や環境悪化により作物が取れない状況がまだ存在しており、これを克服することと言っています。その意味は飢餓地帯での生産力の獲得であり、先進国からの食料の配分を目的にしたものではありません。
・衛生医療問題
衛生の本質は、小児の死亡率、出産女性の死亡率を特に問題視していることにあります。ここで目的としているものは、医療環境としての生活環境の改善と基本的なワクチンなどの必需医薬品の価格を低所得国が国民全員に摂取できる水準に維持することを望んでいるのであって、難病患者の国外治療やワクチンの無料供与などではありません。
・教育を受ける権利侵害問題
教育は全ての人に初等中等教育を受ける機会を与えることを目標にしていますが、その達成障害としては、貧困率や武力紛争、その他の緊急事態といった大きな課題を上げています。この全ては社会問題であり、当該国の体制が障害、特に内戦や国内紛争を克服することを要求しているのであり、先進国には紛争解消への協力を求めているのであって、募金で学校を建てることを求めているのではありません。
・エネルギー問題
エネルギー問題については、一般の考察に齟齬はないようです。代替エネルギーの開発と省エネシステムの構築を目指しています。しかしながらその目的にあるのは、全ての人に電気を供給するということであり、この点ではこの開発には明確なルートは繋がってはいません。
・経済問題
経済の目標は雇用です。起業、第一次産業従事者を含めて、職を持って労働し、その対価を得られることで奴隷労働、小児労働、不当賃金などからの開放です。そして、そのツールは技術革新と経済成長による生産性向上でしょう。

 

○UNDFの思惑
・求める優先順位
UNDFがSDGsで求めているのは、途上国の生活改善です。14項目の多くが途上国が豊かになれば解消してしまう事項になっていることが、何よりもそれが優先であることを示しています。グローバル経済が国際流通を加速させることにより発生するのは途上国の生活改善よりも、自然破壊や資金集中による格差拡大、途上国の貧困化になりかねない状況が見られます。自然の自由な経済活動では、たとえ公的支援やボランティアの力を持ってもなんともしがたい環境にあります。これを何とかすることにあります。
・UNDFの思惑
ここでSDGsを使ったのは、開発途上国の開発を先進国の責任にするためであると思います。その2大役割は途上国の紛争解決とフェアトレードをグローバル企業に強制し利益の収奪を規制することです。併せて、経済成長して途上国産品の需要拡大をする必要があります。

 

○先進国の思惑
しかしながら先進国側は単なる途上国への開発援助とは考えていない可能性があります。
・新たな食糧計画
食料については、生産量を向上させる理由でゲノム組み換えやハイブリッド種子などにより農業生産全体を先進国により掌握することが出来ると考えている節があります。
・エネルギー覇権
エネルギーや発電所建設などにより途上国の土地や港湾使用権を獲得して衛星国化する可能性があります。
・製造業覇権
途上国にプラントなどを輸出する場合、先進国は技術移転を制限し、グローバルサプライチェーンに組み込むことで途上国を安価な労働力の供給源化する可能性があります。
・知財防衛
製造やIT産業において、ある程度の知財の途上国への移転が必要ですが、先進国の知財を抱え込み、または知財権を無視して人材知財を独占しようとする可能性もあります。
・南北問題の東西問題化
各種覇権化はグローバルチェーンを確立することで大国間の2極対立に組み込まれ、新たな東西問題を先進国と途上国間で発生させる可能性があります。

 

 

 

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中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
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防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○EV充電での問題点
・自宅駐車場所での充電
EVがエコである前提は、自動車の使用状況にあります。多くの自動車は、走っている時間よりも止まっている時間のほうが長く、自家用車など、出勤で毎日使う場合でも、職場での8時間、帰宅してから翌朝の出勤までの12時間は停止しています。その使われていない時間に充電を行うことを前提にすると、EVの最大の弱点である充電時間は全く問題ではなくなります。
・自宅に充電設備がない
マンションや賃貸駐車場などの理由で駐車場所に充電システムがない場合、EVの利点は大きく下がります。出勤前か帰宅前に充電サービスに寄って、最低でも30分間の充電をしてからではないと活動できないことになります。それもほぼ毎日です。1日30分を1年間続けると180時間で、毎年7日間充電のためだけに使うことになります。実際はこれに充電場所を探す時間まで付加されます。
その上、大容量電池搭載車であり、自宅で満充電できる環境にあれば、毎日充電する必要がないが、充電ステーションでは満充電が難しく、毎日充電する必要があるというパラドックスもありえます。

 

○充電サービスの問題
・充電サービスの形態
充電サービスは2つ機能から成り立っている。一つは施設を持つ充電サービス、もう一つは個々の充電利用者い対する料金徴収を支援する支援機関である。ここで電気は送電会社から充電サービスが最終消費者として買い取る。サービスは電気の再販ではなく、充電施設の利用料金を支援サービスから受け取る。支援サービスはユーザーから充電時間や電気量、基本料金、自治体などからの補助金、自動車メーカーからのオプションなど様々な契約形態で料金を収納しなくてはいけません。
これはEVの充電が、自動車により充電能力の差があり、同じ時間使用でも、ステーション側の使用電力が同じでも、充電量は同一にならない事があり、またディーラーによるディーラ設置の充電設備でのサービスなど様々な、充電施設とは関係がない料金システムを統合管理する必要があり、収納は支援サービスが広域に展開して多様な情報を管理しながら総合的に取り扱う必要があります。
・充電設備の混雑
充電タイミングは多くのEVで同一です。出勤途中か帰宅途中、休日長距離移動が多いので1日中になります。この環境は設備が混雑するのは回避でいない状態です。時間制限などが設けられていますが、30分の場合が多いので、混雑時の滞留時間は大きな時間消費になります。行き先に設備がなく、追加の充電が必要なときなど最後列に並び直しが必要でとても大変です。
・急速充電負荷による電池寿命への影響
急速充電による電池寿命の低下は、電池の温度上昇の影響が大きく、メーカーの電池寿命への注意点が満充電での炎天下への放置、頻繁な加速減速、日に何度も急速充電を実施するということを見ても、特に満充電時の温度管理ができていれば大きな問題はないようです。

 

○予測される充電システム
・電気配送ロボット
無人運転の宅配便の搬送ロボットの技術を発展させて、荷物の代りに大容量電池を搭載した搬送ロボットを、EV使用者からのオーダーによって自動運転でEVの駐車施設の指定場所に派遣して、EVが駐車場に戻った時点で充電設備がない駐車場所でも充電できるようにします。車両認識用のカメラが付いていますので、自動的にプラグ接続して、充電終了後はインレットのカバーを占めることまでも可能です。
・パンタグラフ給電
バスなど定期的に指定場所に停車するEVが停車中に給電を受けられます。接触がパンタグラフの長さ範囲内での直接接合なので停車場所の許容が大きい。
・路面非接触誘導コイル給電
大容量給電の場合は給電ケーブルが太く重くなり、取り回しが難しくなる。道路上に送電コイルを置いて、EVの底面に誘電コイルを設置すれば大容量の給電を受けやすい。非接触であるので走行中であっても舗装面にコイルを埋設させれば給電可能でしょう。
・車輪間電位差給電
タイヤを導電体として、タイヤの周辺に充電ユニットを設置してて電池に給電すれば、誘電用のコイルをEVに装備する必要はなですし、タイヤの位置はドライバーも自動運転も精密に調整しやすいでしょう。
・マイクロ波給電
コイルによる給電をマイクロ波に切り替えたもの。マイクロ波の送信指向を調整し、EVの受信アンテナの移動を追尾して送電できるので直視できる位置にいれば比較的長時間給電できますし、道路工事は必要ありません。
・レーザー半導体給電
EVを追跡しながら給電するシステムであるが、マイクロ波と違いレーザー光を光電変換システムを使って電気化して給電するシステム。直進性が高く減衰が少なく供給できるが高エネルギー化はまだ難しいでしょう。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○電動車椅子の分類
一般的に車椅子というと医療用の椅子の左右脇にグリップ用の輪をつけた大きな車輪を付けて、背もたれの後ろに押すための取っ手がついたものをだけを指しますが、これが電動車いすになると多少の分類が出てきます。
(1)障害者用の車椅子の車輪に電動モーターを付けて肘掛けに操作用のスティックを付けただけのもの。これはモーター走行しない場合にはモーターと車輪間のクラッチを切れば普通の車椅子のように大きな負荷なく自分で漕ぐことも人に押してもらうこともできます。
(2)(1)の車輪を小さく椅子の下に配置することで車幅を狭くでき、車輪の歩行者やドアなどへの干渉をなくしたもの。これもクラッチが付いていますので、クラッチを切れば押してもらうことはできますが、自分では漕げません。
(3)4輪の高齢者介護用のシニアカー。ゴルフカートを小型にしたようなもので、ハンドルが付いていて自動車のように方向変換はハンドルで操作します。自力で乗り込むことも体を保持することもできる高齢者の歩行の補助用具です。
(4)(3)の3輪仕様の介護用のシニアカー。前輪を1輪にすると車輪とハンドルが直結でき、ブレーキも前輪を1系統でできるので部品数を大きく削減でき低価格化できます。しかしながら路側などの傾斜のある道路走行時や体重移動による左右への揺れへの安定性が劣るため転倒しやすい面があります。利用するには、より姿勢が安定できる機能保持者である必要があります。

 

○電動車椅子の交通手段としての位置付け
・歩行補助器具としての電動車椅子
電動車椅子は歩行困難者の機能補助機器であり、車両ではなく歩行機器として歩行機能を追求しているものです。その意味で、外骨格型のパワーアシストや下半身を立った姿勢で固定した形で健常者の目の高さや手の届く範囲を共有できる、ハンディキャップの解消に直結する機能が求められています。
・車両としての電動車椅子
現在増加しているシニアカーはその時速6km以下という低速性から、免許もヘルメットいらない歩道を走れる車両です。それだけでなく自賠責や車両登録などの車両管理の必要もありません。電池さえ管理できれば使用に障壁がなく電動アシスト自転車、セグウエイ、電動ボード等と同様な簡易移動手段として障害者や要介護者に限定されない利用が考えられています。
また、普通の車両となることで、交通インフラや道交法が電動車椅子の規格に適合しものに変わっていくことがハンディキャップの解消に直結すると考えられています。

 

○電動車椅子の方向性の現状
・スタイリッシュ(近距離モビリティ WHILL(ウィル))
近距離モビリティ WHILLはその車椅子とは思えないスタイリッシュさを持っている。そのスタイルを持って電動車椅子ではなく近距離モビリティとして健常者も含めた普通の移動手段として使われることを狙っている。
・2機能併用(歩行補助車+電動車椅子 スズキ「KUPO」)
スズキのKUPOは電動車椅子が変形して電動の手押しカートになる。これにより、補助機器があれば歩け、歩きたい高齢者を車椅子に拘束することなく、スーパーまでは車椅子、スーパーの中はカートで歩いて回る、歩けるだけ歩いてキツくなったら車椅子という選択を可能にして、高齢者に選択の自由度を広げる事ができます。
・ミニカー(シニアカーの原付版)
シニアカーを時速6kmを超えて運転できるようにして、シニアカーを忌避する高齢者の自動車運転の解消の受け皿にするために、原付ミニカーとしての時速20km程度の低速モビリティを活用とする考えです。流石に時速6kmでは日常の用途の利便性低下しすぎるという高齢者やシェア事業に自動車は駐車場や車両管理費が掛かり過ぎ数量が確保できないと言った事業者に適応性があると思われます。
・ロボット車椅子(ZMP「RakuRo」)
RakuRoは物品搬送用ロボットDeliRoのカーゴを乗用の座席に換えたもので、目的地を入力すると自動運転で搭乗者を運ぶというロボットです。移動範囲を限定することで簡便な自動運転で機能を制限し、価格低減や早期の実用化を実現したもの。過疎地のみでなく市街地でも集約、廃止が進む公共交通機関の代替になりえると考えられている。

 

○電動車椅子の進むべき方向
(1)必須と思われる機能
・電動車椅子の車両化
新しいモビリティ構想で電動キックスケーターを時速15km以下を条件に電動アシスト自転車のように、免許不要、限定的保安装置、ヘルメットは推奨の範囲で車両化する計画がある。電動車椅子も障害者の障害程度により時速15km以下の走行を認める事ができるのではないでしょうか。
・電車に自力で乗れる
現状の車椅子が電車やバスに乗る時の手間はバリアフリーから程遠く、障害者の社会参加の大きな障害になっている。改札で事前申告し、乗る車両を決めてスロープを渡してもらう。乗ったらスロープを外し、それを確認してからの発射になります。それを乗り換えの都度しなくてはならないのはシステムでなんとかできないものでしょうか。
・階段を使える
道路には段差が多い。車輪で便利なのは舗装道路だけである。そもそも車輪が発達したのはローマの街道の石畳など堅牢でフラットな道ができたからです。その意味で、屋内や室内を車輪で移動することは適していません。
・自動車に乗れる
自家用車に乗るのは大変です。車椅子から座席に移動し、乗っていた車椅子を車載する作業は一人でできる方もいるようですが、障害の程度により大きく能力の差がでるところです。現在でもスロープ車などは各種ありますが、電動車椅子に乗ったまま自分で運転するとなると探してもシボレーアップランダーの例しか見つかりません。運転支援システムやワンペダルが出てくる現在、コンパクトな電動車椅子などで小さな車でも対応可能になるのではないでしょうか。
・立ち上がれる
社会のインフラは、基本的に平均を基準に作られています。屋外の施設、屋内の各種窓口、インターホンなども歩いている人の高さを基準に作られています。
(2)トヨタモビリティ基金
ここで昨年トヨタモビリティ基金で賞をとったシステムが歩行補助装置を欠損機能の支援を多様に捉えているのでおもしろい。
・AI搭載自律制御車椅子
・筋電気刺激を活用した下垂足(足首の麻痺)者向け歩行支援装置
・利用者一人で移乗・着座の移行を可能にし、立位状態で走行できる電動車椅子
・路面感知、姿勢制御機能を付加した電動式の外骨格
・車椅子ごと移乗可能な車椅子電動化ユニット

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○水素の特徴
・液化しにくい
液化温度はメタンが-162℃に対して水素は-253℃であり、これは工業的に大量生産されている液体窒素の-196℃以下であり、工業的には簡単に製造できないことを示している。また、保管に関しても液化天然ガスが液体窒素による冷却機構を使って長期間輸送が可能なことに比して、保持輸送が難しいことを示している。
・拡散しやすい
水素の分子拡散係数は0.61c㎡/sであり、メタンの0.16c㎡/sと比較して拡散しやすい。
・燃焼性が高い
酸素との質量割合では、炭化水素と比べて極めて燃焼性が高く、物質としては高燃焼性と言えるが、しかしなガスとして使用する場合に体積や圧力で換算すると、炭化水素と大差ない。
・燃焼速度が速い
炭化水素で最も燃焼速度が速いエチレン(0.7m/s)と比較しても4倍近い(2.7m/s)燃焼速度がある。
・発熱量が低い(圧当たり)
分子量が小さいので、ガス体積またはガス圧力当たりの発熱量は10.8MJ/㎥と小さくなる。これはメタンガス35.8MJ/㎥の1/3しかない。

 

○水素燃料の動力化用途
・液体燃料ロケット
宇宙用の大型ロケットに搭載する液体水素、液体酸素の混合燃焼により推進するシステム。着火性が高く希薄から高濃度まで広い出領域のコントロールが可能なので、軌道投入や起動離脱などに適している。また、ノズル変形による燃焼ガス圧の影響を受けにくいので、スイベルノズルなどのスラストコントロールが可能。
・スクラムジェットエンジン
極超音速で希薄燃焼により巡航するためのラムジェットエンジン。通常のラムジェットエンジンはノーズコーンとノズルで障壁を作り燃焼室内を音速以下にして安定燃焼を確保するが、6Ma以上の極超音速だと燃焼室内でも混合気体の流速が音速になり、炭化水素の燃料では通過時間内に燃焼できないので、極超音速には水素を燃料とした。しかしながら、燃料のエネルギー不足から燃料をジェット燃料に切り替えて燃焼可能速度の5Ma程度での開発に移行している。
・ガスタービンエンジン(開発中)
再生エネルギーの電力貯蔵として水素を生産した場合の、水素から電力を再生産するための発電機として考えられている。また天然ガス発電を直接燃焼してCO2を排気するのではなく、事前にプラント内で脱CO2して水素としてタービン燃料にすることで、CO2の埋設などの管理をするために、既存の火力発電用タービンを水素燃料化する。
・水素ロータリーエンジン
マツダが開発し、ロータリーエンジン車とロータリー発電ユニットのHVを試作している。ロータリーエンジンは給排気口のない状態で燃料噴射するシステムのため、吸気時や排気管の熱などによる早期燃焼が起こりにくく水素燃焼には適していると言われている。ただ単位体積あたりのエネルギーの低い水素では既存のシステムでは出力が出にくいので発電ユニットならともかく、駆動用のエンジンには使いにくい。
・水素レシプロエンジン
トヨタが開発しレースに投入する。通常のエンジンの給排気系統、点火プラグ、燃料噴射器を水素燃料に適合させ、MIRAIの貯蔵タンクや水素配管技術を併せたもの。燃焼エネルギの低さは燃焼速度によるレスポンスやターボチャージャーで対応するのかもしれないが、明らかになっていない。
・水素燃料電池モーター
トヨタのMIRAIで実用化されている、水素を酸素と接触させることにより発生する電気を利用してモーターを回すシステム。

 

○水素燃料の電力貯蔵用途
・電力貯蔵
必要に応じた製造ができない風力や太陽光発電等の導入で発生する、電力生産のばらつきを平準化するための電力貯蔵として、余剰電力で水素を生産し貯蔵し、必要に応じて燃料電池などで発電するための貯蔵システム。
電力貯蔵には電池、キャパシタ、フライホイール、バナジウム、揚水、圧縮空気など、貯蔵期間、貯蔵量により多様な方式があるが、大量でしかも輸送可能なものとしては水素が適している。
・高圧気体と液体水素
貯蔵には高圧タンク、金属吸着、液体水素での貯蔵がある。高圧タンクは700気圧から1000気圧、液体水素は40kg/㎥、金属吸着は重量%で5%程度の貯蔵が目標なので40kgの水素を貯蔵しようとすると800kgの金属が必要になる。液体水素の40kg/㎥は同じ体積で高圧タンクの20倍の水素を搭載できるが、水素の液化に関わる経費は水素製造と同程度であり、価格に明確に現れる。

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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電動キックスケーターの公道走行がラストワンマイル用のモビリティとして注目されています。電動キックスケーターは30年ほど前にホームセンターなどで販売されて使われましたが、警察により原付扱いで各種保安機器、登録等の必要な車両となり、一気に消滅しました。


○規制改革の概要
・現状認識
技術の進展等により、新たな小型モビリティが多種多数に開発され、様々な実証実験が行われています。しかしながら、既存の交通ルールの下では十分にその性能や利便性を生かすことができない可能性が指摘されており、交通ルール等の在り方の見直しを求められています。
・検討内容
事業者等の意見や実証実験の実施状況等を踏まえつつ、在るべき交通ルール(新たなモビリティのみならず、他の交通主体を含めた多様な交通主体の全てが安全かつ快適に通行することを可能とし、また、社会的な理解・合意を得られるもの)について多角的・体系的な検討を行う計画です。この中で電動キックスケーターのラストワンマイルでの活用が検討されます。

 

○キックスケーターの規格の三分化
・歩道通行車両
規格:時速6キロ未満、大きさは電動車いす(シニアカー)相当以下、この速度だと電動キックスケーターは3輪でないと不安定だと思います。無人の配送ロボットもこの範疇に入ります。
規制:歩道が通行可能で全く歩行者と同じ交通規則で、ヘルメット着用も、車両のライトなどの保安機器にも規定はありません。
・小型低速車
規格:時速15キロ未満、制動装置、前照灯は必須ですが制動灯や方向指示は必要ありません。アシスト自転車の延長ですので、狭い道などで自動車と混合した走行の場合には、必要に応じて道交法の手信号で指示する必要があります。
規制:走行は自転車用通行帯でヘルメット推奨に留められています。免許は現在では交付時の講習がいらない小型特殊免許ですが、将来的には免許不要で講習会を修了することが条件になる可能性があります。
・原付
規格:時速30キロ未満、制動装置、保安装置(前照灯、ナンバー、ナンバーライト、方向指示器、制動灯)が必要です。
規制:ヘルメットは強制です。車両の市町村での登録が必要で、これにはメーカーが発行する登録用の諸元表などが必要になります。免許は原付免許が必要で、普通免許には付帯しています。原付免許は試験は学科のみですが、交付時には実技講習が必要なので、最小限の技量は必須になります。

 

○電動キックスケーターの特性と問題
・低重心
ハンドル以外は全て足の下になる構造ですので、低速でも倒れにくいのは利点ですが、その分だけ高速では曲がりにくくなります。電池を搭載することで更に低重心となっています。
・軽量
軽量こそはキックスケーターの最重要機能です。担いでもカートのように片手で引きずっても負荷が感じられないことが、パーソナルなラストワンマイルに使いやすい条件です。その代り、軽量は外力の影響が及びやすく、ちょっとした凹凸で前輪の方向は変わるし、風により直進性は失われてふらつきやすくなります。
・小径タイヤ
小径タイヤは、キックスケーターの最大の利点である可搬性の中でも、折りたたんで公共交通機関に持ち込むための絶対的な条件です。そして小径のほうが回転荷重がが少ないため小さなモーターでも弱い電力でも円滑な走り出しができます。その代り径が小さいとタイヤの遠心力が小さくて自立安定性が失われますし、接地角度が大きくなることにより直進安定性も悪くなります。また体を傾けて曲げる場合は浅い角度でも急激に曲がれるので、注意が必要です。これを大径にすると折りたたんでもコンパクトにならず、重要な可搬性は失われます。
・立ち乗り
キックで始動するために立ち乗りは必須です。座席がないために軽量とワンタッチの2つ折りが可能になっています。ステップ上の立つ位置が一定ではないので、ハンドル荷重が立ち位置により変化します。

 

○電動キックスケーターが晒される交通事情の問題
・路側帯の問題
低速車中の低速者になりますので、路肩付近が走行体になります。その場合、歩道横断用の段差解消用の傾斜ブロック、排水性のための路側帯の傾斜が急になってます。排水口の金属格子、雨などで溜まった砂利小石や落ち葉があって、接地面の小さいキックスケーターのタイヤのスリップの原因になります。
・横断歩道
片側3車線など幹線道での低速車の右折は、対向の直進車の間隔が大きくなければならず、後続の車両と右折タイミングが異なるので混乱を招きやすい。
・免許の問題
原付か小型特殊かで大きく異なるのは実技講習の有無であり、小型特殊の取得が1日でできるのに比して原付免許の取得は2日間かかります。また、原付免許では小型特殊は運転できないので、原付運転の高齢者の受け皿にはなりません。
・ラストワンマイルの交通機関
日本において民営の自転車シェアなどが成功し一般化しないのは、日本人が歩くことをあまり厭わないからでしょう。また、都市ではタクシーの流し営業があり、荷物などがあればラストワンマイルでもタクシーを利用することができます。1駅歩こうと言われる現代に、ほんの10分から20分程度の歩きにモビリティの多用を想定するのは中々困難だと思います。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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私は耳かきが好きな方で、耳穴を掻いて異物を感じると取り出して実物を見たくなります。近年の耳鼻科医は耳かきをやめさせるようにしていますが、なかなかやめられません。この何故に医師は止めさせたがっているのかから、生物の再生について考察してみました。

 

○耳かきの無意味性
・耳垢と耳かきとは何か
耳は呼吸器系と同様に中空の管構造になっています。外耳道はそのまま耳殻が取り巻いた穴だということはわかりますが、中耳も咽頭につながった管です。管の中間が振動を伝える内耳と接触している構造になっています。耳の管は呼吸器や消化器官と同じで外皮であり、真皮で分裂発生してから表皮まで移動して、最終的には破壊されて剥離します。この剥離が垢となります。全ての外皮は垢になりますので、消化器や呼吸器も外皮ですが普通は粘膜となっていて、多くは消化器系で排泄物になります。
耳かきとは外耳道の古い死んだ皮膚を剥ぎ落とす行為になります。
・耳かきを禁止する耳鼻科医
近年耳かきを禁止する医師が多くなっています。少なくとも、健康な状態での耳垢は自然に落ちるので耳かきは必要ないと言われます。それよりも耳かきの危険性の方を指摘する場合が多いです。
・耳かきの危険性
耳かきの危険性は2つあります。一つは鼓膜に直接触れて痛めること。もう一つは外耳道を過剰に刺激して炎症、出血、痂皮(かひ:かさぶたのこと)になり逆に難聴になることがあります。このようなことが起こるのは、刺激に対する習慣性とより強いまたは新たな刺激を求めて進行することがあるからです。

 

○外耳の外皮の再生システム
・皮膚の成長
外耳の垢は耳かきを差し込んで取らなくていいということには外耳道の皮膚の成長のシステムに理由があります。通常の皮膚は表皮最下部の基底層で分裂し、表面に押し出されて、外皮になって固定し、老化してはくりします。
・鼓膜を含む外耳の成長
外耳道の場合も分裂、表面への移動は同じですが、表面に出てからが違います。外耳の表皮は老化に伴って耳殻向かって移動していきます。耳殻との境界で枕を主体とする寝具と擦れて剥離します。これによると、外耳道深部の皮膚には老化した部分がなく垢になることがないことになり、奥にできる耳垢は耳かきによって傷んだ皮膚が垢化したもので、それを掻き出しているというマッチポンプ的行為ということになります
・爪や髪の毛との類似性
イメージし難いかもしれませんが、人間の皮膚には同様な機能を持った爪と皮膚があります。イメージとしては爪が爪母で分裂して爪床を爪床の一部を巻き込み成長しながら指先に移動し、外爪皮角が外爪皮から離れた時点で終了するのと同様とも言えます。

 

○ネズミと鮫の歯について
・ネズミの歯の成長
伸び続ける歯の代表はネズミの切歯です。歯の形状や組織構造は人間と同じです。ただ、ネズミの切歯の根元にあるエナメル芽細胞が、人間の場合は歯の形状が完成すると多くが死滅し、外刺激による摩耗などに対して遥かに低い再生能力になるのと違い、ネズミの歯のエナメル芽細胞は分裂し続ける機能を失わないというシステムです。これは多くの草食動物の臼歯にも見られます。
・鮫の歯の成長過程
同様な器官で有名なものはサメですが、サメの場合口腔内の皮膚がうろこ状の板として発生し、口縁に向かって移動するにつれてエナメル質が含浸し、口唇のアールに沿って曲げられるときに皮膚から立ち上がるという構造のようです。表面を移動するところは耳垢と同じですね。

 

○象の歯について
・哺乳類の中でも象の歯は特殊な生え方をしている。
象の臼歯は水平交換というもの巨大な3本の臼歯を歯車のように少しずつはやしていき四角い端の角から摩耗していき、摩耗残りの歯茎内の破片だけを口先から脱落させます。
・再生の代行行為としての象の歯の特殊性
同じ草食動物でも牛や馬の場合はエナメル質の再生が咀嚼による摩耗と釣り合っており、歯自体の形状が変化しないのと明確に差があります。象が灌木まで咀嚼できるほどの嵌合力を持つための避けられない摩耗に対応した再生の大体としての歯の巨大化と生え方の変化ではないかと思います。

 

○再生について
・多くの組織は再生する
すべての生物の組織には再生能力があります。皮膚の傷が治ったり、骨が繋がったりできることからも、組織の欠損を補填する程度の能力はあります。
・再生の境界としての爬虫類と両生類の大きな差(組織再生と器官再生)
器官そのものにまで完全に再生能力を持つものの境目は爬虫類と言われています。イモリもトカゲも尾を自切しますが、骨まで再生できるのはイモリまでであって、トカゲは軟骨だけ伸長して骨の代替をします。

このように耳かきの度に生物の再生機構について考えてみるのはいかがでしょう。

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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