○農業とDXとモビリティ
DXの有効機能を一言で言えば生産性の向上であり、その機能をどのように利用するかが経営者に求められています。実は原料と製品比率から言えば農業こそ極めて高生産性産業なのです。米などは種1粒が約半年の育成で1600粒の収穫が得られるています。どのような産業でも特殊な条件なしに1600倍、16万%という生産性が保証された産業はありません。
しかしながら、農業の生産性が悪いものという認識が一般的なのは、土を対象とする汚れる産業であること、作業姿勢や荷重作業があること、実作業時間ではなくても拘束時間の長さがあること、気候など自然現象による収益の不安定性などがあると思われます。
つまり、産業の基本的生産性をやり方のまずさで台無しにしているということになります。
このような不具合は、国内の農業保護による農産物の価格維持がなされず、途上国産品との競争にさらされるという行政の問題がありますが、それでも気候など情報の取扱や動力アシストなどで障害を取り除くことやモビリティを含む物流システムの改善で対応でき、DXとモビリティ自動化の本来の役割である障害の排除はこのような不具合や障害をツールによって解消するところにあります。

 

○農水省の掲げる農業分野における課題
・農業分野では、担い手が2015年の176万人から2020年の136万人と減少し、年齢構成も65歳以上の割合が2015年の64.9%から2020年の69.6%と高齢化の進行が見られる等により労働力不足が深刻な問題になっている。
・農業分野の外国人材の受入れは、2014年の1.7万人から2019年の3.5万人と5年で2倍の急増傾向にあったが、コロナ禍に伴う入国制限により、一時は全国で2,500人の受入の見通しが立たない状況になっており、外国人労働者頼みの労働力の危険性が明確になっています。
・農業の現場では、依然として急峻地での作業や加工選別など人手に頼る作業や手入れ収穫時期の判断等熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が重要な課題のままとなっています。

 

○農水省が提案するスマート化
・農業モビリティの自動化、ロボット化
操作アシストによる直進維持機能を持つ田植え機は、操作が不慣れな従事者が植えても、通気、日照、不倒性が高く、機械稲刈りに適したまっすぐな田植えができます。運転アシスト機能付コンバインは収量センサを装備しており、穀物タンクの残容量を予測して最適なタイミングで排出ポイントに自動で移動することができます。また追肥作業機では搭載カメラと施肥機を自動連携させ育成状況に応じた精密な施肥が可能になります。
農業におけるドローンの規制緩和により、ドローンによる農薬散布の規制緩和が実行され、人や車両の立ち入り禁止区域を定めれば、補助者の配置なしに目視外の農薬散布も可能となりました。
また農業用の簡易型パワーアシストスーツや運搬ロボット、座ったまま移動できるモビリティにより腰への負担や運搬の軽労化を実施し、就労可能年齢層の拡大、男女の作業差の解消などが図れます。
・農作業エキスパートシステム
マニュアル化が困難とされてきた熟練農業者の高度な生産技術をAI等により「見える化」し、熟練農業者の技術・判断を継承するとともに、新規就農者の技量的な就業障壁を低減させ就業者の増加が図れます。
・場水管理システムによる水田の水管理の遠隔・自動制御化
水田水位などのセンシングデータを常時モニターし、給水バルブ・落水口を遠隔または自動で制御でき、降水、水温など気象による育成不良や病害等の減収要因発生を防止できます。
・圃場の低層リモートセンシングに基づく可変施肥技術
ドローンカメラにによるセンシングにより、圃場内の生育バラつきをマップ化し可変施肥の最適化を実施することができ、農薬量と散布作業の極限化、省力化、収量と品質の向上が図れます。
・衛星リモートセンシングを活用したクラウド型営農支援サービス
人工衛星が撮影した圃場の画像を解析し、農作物の生育状況を診断・見える化してレポートし、圃場ごとの状況に応じた作業計画の立案、適切なタイミングでの施肥や収穫が可能となり、 高収量化、高品質化、省力化に寄与するとともに、農機遠隔操作や給水管理等の農業ICTサービスも可能になります。
・データ連携とモビリティ自動化によるフードチェーンの最適化
農業製品の生産から流通・加工・消費・販売まで一連の農業、農産物データを連携し、作付、作柄などの生産から卸売価格、輸送費用などの流通・加工、消費者嗜好・消費・販売まで最適管理が可能なスマートフードチェーン、昼夜運転が可能な自動運転輸送トラックや自動配送倉庫などの使用により物流の柔軟化、共有化する事によって経済効果を上げるとともに、CO2排出削減や需給マッチングによる食品ロス削減により、環境負荷の低減が図れます。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○社会の高齢化に向かって必要性が高まる車両と考えられるものとして福祉車両の充実があります。福祉車両と言われるものは保健衛生関連の特殊車両と障害者移動に関わる一般車両の機能支援車両があります。この中でも特殊車両はX線検診車や献血車など各機能を持った機関がその役割と既存技術、必要機器に応じて発注するもので一点物です。販売されるような福祉車両は基本的に障害者移動に関わるもので、大きく分けて介護者支援車両と障害者支援車両になると考えます。

 

○介護者支援車両
介護者支援とは、通常の人員輸送車両において、運転者である介護者が実施する被介護者の搭乗支援業務を補助する機能が付いた車輌のことです。通常のバスやワゴンでは下肢障害者用の車椅子も寝たきり障害者用のストレッチャーも載りませんのでそれなりの改修が必要です。ストレッチャーは救急車などで規格が決まっており、緊急輸送用ですが車椅子は生活輸送であり生活支援と言えます。

 

○下肢障害者搭乗支援
・スロープの問題点
車いす用の車両は後部ドアか後席サイドドアからの乗車機能を付けることになりますが、簡便なものはスロープと車椅子固定装置の設置のみですが、これでも簡単ではありません。厚労省の基準では屋内のスロープであっても自力で上るのは1/13、家族など一般的介助者で1/8、強健な専用介助者でも1/6であり、底床ワゴンと言われる車両でも床高は40cmはありますのでスロープ長は2.4m必要になり、一般的な移動手段では現実的ではありません。
・リフト
リフト機能を車両に付ける場合、引っ越しトラックのリフト車のように車椅子を持ち上げるものと、車両の座席をドアよりも外側にスライドかつ座面下げを行い車椅子からの乗り換えを容易にする座席リフトがあります。高齢者は足上げが不自由になる場合が多いので、床面が40cm程度ある普通の乗用車への乗り込みが容易でなくなります。この対策として、この座席リフトは高齢にも含めた杖や歩行支援器具での歩行可能な機能障害者にはそれだけで有効な支援となります。

 

○下肢障害者移動支援
・車椅子の車両化
車椅子を車両として機能的に見ると、単に座位による車輪移動機材であり軽車両と機能的な際はありません。電動化でも椅子と車輪と動力の結合でしかなく機能が画一的であると言えます。セグウエイから始まった近年の自律機構をもった電動移動機材の発達は、様々な形状の移動機器を可能にし、機能的には電動アシスト機能や立ち上がり機能など多様な車椅子の登場はラストワンマイルモビリティとの境界ギャップを限りなく低くでき、障害者と健常者の差を無意識化できる事象であると言えます。
・運転者用車椅子
下肢障害者の自動車運転は、現在その多くが折り畳み車椅子を使用して乗り換えと車載作業を実施しています。車側としては手操作運転機能、折り畳み車椅子収納スペースの確保、その他収納用に簡易クレーンやルーフキャリア収納システムなどがありますが、いずれにしろ障害者に負荷があります。車椅子の容積が大きいこともあって容積の小さい日本車ではのまま乗り込める車両は殆どありません。小型モビリティ技術を使用して車椅子をコンパクト化することにより、車椅子で乗車し固定でき運転できる車両を作ることも可能でしょう。

 

○視覚障害者移動支援
・視覚障害者と自動運転
近年のAIによるスマートスピーカー等の音声による対話型機器操作は、視覚障害者の機器操作能力を格段に向上させるといえます。音声対話型操作と自動運転は視覚障害者を健常者と全く同様なレベルでのプライベートな移動手段としての可能性を持っていると言えます。
・スマート白杖
視覚障害者の最も重要な移動手段は現在は白杖と盲導犬でありますが、その現状での危険性と行動制限の存在は明確であり、AIなどによって代替できないかは長く言われています。自動車の自動運転が可能になりつつある状態において、スマート白杖や盲導犬ロボットが無い事の方がおかしい状態です。
カメラやミリ波センサーなどを使った高精度の自動運転のナビゲーション機能、センサーからの文字読み上げやマッピングによる周囲情報の音声伝達機能などをコンパクトに纏めて白杖に付帯できれば、触覚感覚のみの白状に加えて、多くの情報を視覚障害者に提供できるものになります。
・盲導犬ロボット
ボストン・ダイナミクス社が拡張ナビ機能、触感センサ、超広角カメラ、超音波センサを搭載した四足歩行ロボットのspot、アイロボット社のビッグドッグなどが、四足歩行で、ナビ機能で歩行者とコンタクト取りながらの追随歩行ができるロボットができ、また公道走行が可能な無人配送ロボットが走行している状況で、その出現のタイミングが来ていると思います。
・スマート白杖
盲導犬ロボットのナビゲーション機能、各種センサー及びセンサー情報音声伝達機能などをコンパクトに機能限定して白杖に付帯できれば、触覚感覚のみの白状に対して多くの情報を視覚障害者に提供できるものになります。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○ローカル路線バスの自動運転化の必要性
ローカルの移動手段は苦境に至っています。公共交通の主役だった鉄道はマイカー所有率の向上によりバス輸送に転換し、そのバス路線も利用者の減少で採算が取れません。地方の人員輸送環境は、しばらくは100%を越える世帯自動車所有率で構成されていて、家族により賄われていました。その環境に住民の高齢化で老人のみ世帯の増加という想定外の困難が加わります。高齢運転手の事故を起点とした運転免許返納運動により高齢世帯の移動手段がなくなったのです。
公共交通機関は利益低下によって事業者は撤退し、その対応として事業は第3セクターを経て公営化し、それでも利用者が少なくワゴン車によるミニマムなデマンドコミュニティ化に至ります。このオンデマンドは業務作業の予測ができず、車両はいくらでも公用ワゴン車を流用できますが、一般乗合旅客自動車運送事業であり、その事業維持のための定期運送及びそのための2種免許運転手の雇用は簡単ではありません。運行機会が乏しい環境での乗り合いの維持は運転手の給与だけしか経費削減方法がなく、ほとんどボランティア化せざるを得ませんので、その結果としてバス運転手は不足します。
この問題への対応として、また現状の交通システムを大きく変えない方策として、運転手確保の代替に技術の進歩が著しい自動運転車の導入が当然考えられます。

 

○自動運転化に必要な事項
・組織の協力
路線バスの自動運転化には単に車両を持ってくればいい訳ではなく、環境などについていくつかの必要事項があります。
バス運営が完全公営化済みでない場合は運営主体のバス事業者の対応が必要になりますし、地元自治体やバス事業者などの協力や走行環境の整備も必要です。
・インフラ整備
走行車両をモニターするための無線ネットワーク環境や、バス停や走行ルートの監視にカメラや画像転送環境も必要です。道路もバスのセンサーカメラが認識しやすいようなセンターラインや路側帯、バスの停車エリアを白枠で囲うなどを整備し管理する必要があります。
・住民の協力
住民への周知も必要です。利用者に対しては、自動運転により運転手による利用者サポートはなくなります。特に手押し車やキャリヤを持ち上げられない高齢者への乗降サポートはできなくなります。安全のためにどうしても走行速度が下がりますので、到着時間も遅くなります。また、周辺住民も路上駐車は当然のこと、道路への落下物、路側帯を隠すような落ち葉や土砂の排除など道路環境維持への協力が必要です。そして何よりも新しい交通システムへの違和感を排除して、住民の親和性と利用意欲を振作することが必要です。

 

○実証実験の必要性
これらの必要な事項を考慮して自動運転の導入決定には、制度としての社会的受け入れ可能性や必要経費規模の受け入れ可能性に付いて実証実験で確認する必要があります。
・運用車両の設定
運用車両の設定が適正かを実証する必要があります。車両によってスムーズに運用可能な乗客量、選択可能なルート、道路走行環境や走行速度、必要なインフラが設定されますし、その逆に運用やインフラから車両を設定する必要もあります。
・運営路線、走行時刻の設定
運用を計画するに当たって、あらためて地域の運行路線の需要と運用可能性、運用効率を最大にできる路線と時刻表を決定する必要があります。自動運転によりバスが走行する道幅やカーブ、センターラインや路肩の表示設置などが制限することを実地検証する必要もあります。
・安全性の実証
公共交通機関の必要事項として、運用性の事業実証をすることの最も重要な事項は経営可能性ではなく安全性です。安全性については利用者への保証事項ですので確実かつ明確に実証する必要があります。運行中に発生しうる乗客が感じる不安全要因をすべて列挙し、全てを検証する手順を取らなくてはいけません。不安要員には急ブレーキ、急ハンドル、不自然な立ち往生、段差越ショックなど体感するすべての不測行動をすべて調査し頻度を明確に実証する必要があります。
・利用頻度価格設定の実証
考えた最良の運行での利用実績を調査し、この地域の現在の交通機関の必要性の実態を実証する必要があります。公共交通機関の維持が、一部の人の要求か、地域の総体としての要求かを声の大きさで判断してしまうことが今までの失敗を生んでいます。実証試験での利用状況から客観的に判断する必要性があります。

 

○過疎地域の交通インフラを福祉政策として実施する場合の重要事項
・行政からの自助共助公助の検討要請
一般的に現在、公共交通機関のみならず、福祉全般に言われていることがあります。それは最初から事業を公助を前提に考えることは、社会としての効率、利便性に適合しないことが多いということです。公助が地域のつながりを破壊してしまう可能性もありますし、個人の行動を制限してしまう可能性もあります。
・行政が掲げる「自助」「共助」の本当の意味
自助とは行政が何もしないことではありません。個人の行動を制限する規制を緩和します。今回の道交法の改正により、時速20km制限の免許不要の小型電動移動手段を使用できるようにすることが典型です。公助にも規制緩和があります。uberなどの白タク行為を条件付きで開放したり、地域のライドシェアやカーシェアに補助金を付けることもできます。
・免許返納に対する自助としての代替マイクロモビリティ
自助を検討すると免許返納で公共交通機関を準備すること以前に、免許を要しない小型電動自家用自動車の購入が選択しに上がります。現在のシニアカーの時速6kmではどうにもなりませんが、時速20kmになれば5kmまで15分なので、日常の移動手段になり得ます。もう少し元気ならば電動アシスト3輪車も選択肢です。
・自動車保有者による共助としてのuberサブスク
共助を検討すれば、地域のまだ運転可能な前期高齢者による免許返納した後期高齢者の輸送支援という手があります。uberのシステムをサブスクで実施すれば乗せ手と乗り手を調整できますし、顔見知りによるCtoC契約という手もあります。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○カーボンニュートラルとは
・脱炭素とカーボンニュートラル
温暖化に対抗する社会構築に脱炭素社会という言葉がありますが、これは炭素及び炭化水素を社会や産業に全く使用しないことです。対してカーボンニュートラルは、企業や社会、国家の各単位に関わらず、各領域でCO2の排出量と吸収量のバランスを取ることです。これは排出量と同じ量の吸収への貢献をすれば良いということです。

 

○カーボンニュートラルとCO2排出削減
・CO2排出源の状況
CO2の排出源は多様です。最大の排出源は燃料です。いわゆる化石燃料である石炭・石油・天然ガス由来の燃料、バイオ燃料と言われる木材やバイオマス由来の炭化水素もCO2の排出源になります。
建築に使用するコンクリートもCO2発生源です。コンクリートはセメントを原料にしていますが、セメントを製造時に消石灰炭酸カルシウムから大量のCO2が排出されます。
生物の呼吸はCO2生産工場です。人間を考えても人が一日に排出するCO2を1kgとして、1年間に全人類65億人が吐き出すCO2の量は24億トンとなります。この量は化石燃料が排出するCO2量の約9%に相当します。

 

○土壌菌分解
・CO2消費元の状況
CO2の吸収は多様ではありません。基本的に光合成のみです。多様性があるとしたら光合成生物の違いしかありません。陸上では森林などの葉緑体植物とシアノバクテリア類と共生する陸上植物(ツノゴケ、ソテツなど)がCO2を吸収しています。
海洋吸収と言われるのは、葉緑体を持つ水生植物や海藻、シアノバクテリアなどの光合成細菌と共生するさまざまな原生生物(有孔虫,放散虫,繊毛虫など)、菌類(地衣類)、後生動物(海綿、サンゴ、ホヤなど)などがあります。
・光合成による吸収の問題点
実は光合成はエネルギー変換としては極めて効率の悪い生成機構だと言えます。繁茂する植物の自身の代謝を含めるとエネルギー変換効率の理論的上限値は2~3%になりますし、野外の植物の発生から枯死の間の生育条件の変遷を考慮して全期間で平均すると、太陽光エネルギー変換効率はせいぜい1%レベル程度とのことです。つまり、日照や植物の植林程度の増加ではCO2吸収への影響は少ないということになります。
これについてはトヨタ自動車が発表した「人工光合成」のギ酸製造の技術では、エネルギー変換効率を7.2%に高めることに成功しました。実用水準といわれる10%以上を目指して開発を続けています。

 

○CO2削減法
・燃料
CO2の削減はそのままCO2発生源を社会から排除するということになります。排除方法にはいくつかありますが、第一は、化石燃料としての石炭・石油・天然ガスを化石燃料以外に切り替えることです。切り替え対象燃料は、燃料電池原料でありかつ燃焼材料にもなる水素があります。その水素の起源として、メタノール電気分解、水電気分解、廃プラスチック熱分解がありますが、いずれも究極すれば電力で代替することになります。燃料としては他にアンモニアがあります。アンモニアは沸点が-33度と水素に比べて高温であり、20度でも8.5気圧で液化するので、船舶や大型の車両などでは液体での貯蔵が可能です。ただ、着火温度が651℃と重油よりも高く、燃焼率を向上させるためにLNGとの混合や熱分解で水素と窒素にして水素との混合燃料とする方法があります。
第二に、バイオ燃料として穀物炭水化物のアルコール発酵によるバイオエタノールと植物性廃油や藻、ミドリムシなどから抽出した脂肪酸メチルエステルのバイオディーゼル燃料があります。
・食品、生物
燃料以外でも、焼却処理が必要な廃棄物の削減もCO2の削減と考えられます。これについてはプラゴミの削減やフードロスなどがCO2削減にリンクします。また、家畜削減も二通りの理由でリンクされています。1つは家畜が生産する精肉の数倍から十数倍と言われる、家畜が消費する穀物を直接に食料化や燃料化を行うことにより、食料や燃料の増産活動を抑制することが可能なこと、もう1つは家畜の腸内細菌がセルロース分解時に発生させる、温室効果ガスであるメタンガスの削減です。

 

○ネガティブエミッションとしてのカーボンニュートラル
・CO2の埋設
排出の削減ではなく空中に放出された空中炭素の固定はネガティブエミッションと言われています。これには具体的に2つの方法が考えられます。地下水貯留と光合成です。
地下水貯留はCO2高濃度で低水温の場合の溶存性の高さを利用し、地下帯水層にCO2を長期溶存させるという方法です。吸収量はCO2の濃度に大きく依存しますので、工場等の排気用の手段であり、大気中のCO2の回収には適していません。
溶存と同様に、化学反応での固定もCO2濃度に大きく依存しますので、400PPM程度の大気からCO2を化学的に安定的に固定できるのはやはり光合成しかありません。光合成でCO2を植物のボディとして固定しますが、自然環境では微生物によって分解されてしまうので、微生物の少ない地中や海中に埋没させて固定することになります。埋没時に植物体のままであると寄生付着した腐敗菌等によって分解される傾向があるので、防腐処理をするか炭化させて埋設すると効率的です。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○DXとデジタライゼーション
DXを組織や企業のシステムのAI、IT、IOT化と考えることの問題はどこでも指摘されています。IT化やIOT、AIの導入はあくまでもオフィスやシステムのデジタライゼーションであってDXの主体であるトランスフォーメーションとは言い難い変化だからです。確かにITによってペーパーレスやテレワークが実施されれば業務環境は変化しますが、それは事務作業が変わっただけで組織編成用語としてのトランスフォーメーションの意味である再編、あるいはより一般的な構造変化とはとても言えないレベルでしょう。

 

○トランスフォーメーション
・構造変化とはなにか
継続する組織には常にいくつかの変化の圧力がその内外に存在します。社会の常識や行動規範、行動原則が変化したことにより社会て存在である組織がそれに適合しなくてはいけない社会的変化圧力。
組織自体が成長や多角化、併合などにより、組織の規模や構造が変化したことにより、従来の組織形態では意思疎通や情報共有が低下するための能力低下に対抗する必然が生じる構造的変化圧力
技術の発展により組織を維持しているシステムが陳腐化して、競合や協業するたの組織のシステムと連携が取りにくくなり、業務の支障が生じる技術的変化圧力などがあります。
・圧力への対応不全要因としての組織
これらの圧力は拒否することは組織の安楽死を意味します。組織が維持されるためには圧力に応じた変化が必要になってきます。しかしながら、ただ圧力の発生箇所を変形させて適合させることは健全とは言い難い対処であることは明らかです。

 

○組織の存在価値
・社会的意義としての組織
組織には目的があり、それは組織が果たす役割であるという言い方もできますが、日本では歴史的に組織や企業を設立する場合にはその理想を掲げます。そうでなくても公的組織ならもちろんですが、一般企業でも設立の理念を要求されることが普通です。多くの場合その業務の遂行によって社会に貢献することを理念にします。
・構成員の自己実現的ツールとしての組織
それ以外にも日本の企業はその構成員を幸福にするという目的があります。その目的として企業は構成員の自己の実現を支援できるシステムでなくてはいけません。
・利益資産の合資としての組織
労働資源や資本を合資し事業資産を形成するための組織の存在意義もあります。
・理想実現の障害としての既存組織
組織は常にその目的を阻害する要因に直面しています。既存の組織体制や組織インフラが情報不足や人材不足、設備不足、資金不足などにより理想とする行動ができないことが通常です。

 

○組織改革ツールとしてのデジタル
組織はその機能を最適にするために常時変化をするべきものでしょう。従来では各種の障害により簡単には実行できない構造変化がデジタル技術によって可能になる可能性が出てきました。それによって各組織は、自らの存在理念に立ち返って可能な構造変化を再検討する必要があるということです。
現在の組織が、柔軟できめ細かい利用者対応、公平迅速な組織決定、が適宜適切な組織構成員の能力のフィッティングができているかを検討し、それらが驚異的に向上するツールであるITシステムが存在するか、組織のアーキテクチャーが適合可能な領域にあるかを検討し、それに必要な組織教育、組織合意、経費準備を含めた組織改編とシステム開発を実行することではないでしょうか。
そのためには改変の帰着点が確固としていなくてはならないので、組織のトップが組織の理念を明確に認識できているかどうかが重要になります。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○農業とDXとモビリティ
DXの有効機能を一言で言えば生産性の向上であり、その機能をどのように利用するかが経営者に求められています。実は原料と製品比率から言えば農業こそ極めて高生産性産業なのです。米などは種1粒が約半年の育成で1600粒の収穫が得られるています。どのような産業でも特殊な条件なしに1600倍、16万%という生産性が保証された産業はありません。
しかしながら、農業の生産性が悪いものという認識が一般的なのは、土を対象とする汚れる産業であること、作業姿勢や荷重作業があること、実作業時間ではなくても拘束時間の長さがあること、気候など自然現象による収益の不安定性などがあると思われます。
つまり、産業の基本的生産性をやり方のまずさで台無しにしているということになります。
このような不具合は、国内の農業保護による農産物の価格維持がなされず、途上国産品との競争にさらされるという行政の問題がありますが、それでも気候など情報の取扱や動力アシストなどで障害を取り除くことやモビリティを含む物流システムの改善で対応でき、DXとモビリティ自動化の本来の役割である障害の排除はこのような不具合や障害をツールによって解消するところにあります。

 

○農水省の掲げる農業分野における課題
・農業分野では、担い手が2015年の176万人から2020年の136万人と減少し、年齢構成も65歳以上の割合が2015年の64.9%から2020年の69.6%と高齢化の進行が見られる等により労働力不足が深刻な問題になっている。
・農業分野の外国人材の受入れは、2014年の1.7万人から2019年の3.5万人と5年で2倍の急増傾向にあったが、コロナ禍に伴う入国制限により、一時は全国で2,500人の受入の見通しが立たない状況になっており、外国人労働者頼みの労働力の危険性が明確になっています。
・農業の現場では、依然として急峻地での作業や加工選別など人手に頼る作業や手入れ収穫時期の判断等熟練者でなければできない作業が多く、省力化、人手の確保、負担の軽減が重要な課題のままとなっています。

 

○農水省が提案するスマート化
・農業モビリティの自動化、ロボット化
操作アシストによる直進維持機能を持つ田植え機は、操作が不慣れな従事者が植えても、通気、日照、不倒性が高く、機械稲刈りに適したまっすぐな田植えができます。運転アシスト機能付コンバインは収量センサを装備しており、穀物タンクの残容量を予測して最適なタイミングで排出ポイントに自動で移動することができます。また追肥作業機では搭載カメラと施肥機を自動連携させ育成状況に応じた精密な施肥が可能になります。
農業におけるドローンの規制緩和により、ドローンによる農薬散布の規制緩和が実行され、人や車両の立ち入り禁止区域を定めれば、補助者の配置なしに目視外の農薬散布も可能となりました。
また農業用の簡易型パワーアシストスーツや運搬ロボット、座ったまま移動できるモビリティにより腰への負担や運搬の軽労化を実施し、就労可能年齢層の拡大、男女の作業差の解消などが図れます。
・農作業エキスパートシステム
マニュアル化が困難とされてきた熟練農業者の高度な生産技術をAI等により「見える化」し、熟練農業者の技術・判断を継承するとともに、新規就農者の技量的な就業障壁を低減させ就業者の増加が図れます。
・場水管理システムによる水田の水管理の遠隔・自動制御化
水田水位などのセンシングデータを常時モニターし、給水バルブ・落水口を遠隔または自動で制御でき、降水、水温など気象による育成不良や病害等の減収要因発生を防止できます。
・圃場の低層リモートセンシングに基づく可変施肥技術
ドローンカメラにによるセンシングにより、圃場内の生育バラつきをマップ化し可変施肥の最適化を実施することができ、農薬量と散布作業の極限化、省力化、収量と品質の向上が図れます。
・衛星リモートセンシングを活用したクラウド型営農支援サービス
人工衛星が撮影した圃場の画像を解析し、農作物の生育状況を診断・見える化してレポートし、圃場ごとの状況に応じた作業計画の立案、適切なタイミングでの施肥や収穫が可能となり、 高収量化、高品質化、省力化に寄与するとともに、農機遠隔操作や給水管理等の農業ICTサービスも可能になります。
・データ連携とモビリティ自動化によるフードチェーンの最適化
農業製品の生産から流通・加工・消費・販売まで一連の農業、農産物データを連携し、作付、作柄などの生産から卸売価格、輸送費用などの流通・加工、消費者嗜好・消費・販売まで最適管理が可能なスマートフードチェーン、昼夜運転が可能な自動運転輸送トラックや自動配送倉庫などの使用により物流の柔軟化、共有化する事によって経済効果を上げるとともに、CO2排出削減や需給マッチングによる食品ロス削減により、環境負荷の低減が図れます。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○超小型モビリティとは
超小型モビリティの新たな定義が示されました。超小型モビリティとは、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動手段となる1人から2人乗り程度の電動車両ということになり、過去の企画から変更され電動車両であることが明記されました。また、この変更で、公道走行許可のため認定制度よって規定される(2)項の地域認定制度に依らないで国土交通省が公道運行の車輌型式を付与する制度が規定されました。
【認定制度の概要】
 運行及び車両に係る条件を付すことで、安全・環境性能が低下しない範囲で座席の取付け基準等、一部の基準を緩和し、超小型モビリティの公道走行を可能とする制度。(公布日及び施行日:平成25年1月31日(木))
 ◎主な認定条件  [1]高速道路等は運行しないこと
          [2]交通の安全等を図るための措置を講じた場所において運行すること
ここで交通の安全等を図るための措置の設定は地域自治体の業務であり、認定制度は地域自治体の地域交通システムの試行プロジェクトと共同開発する以外での公道走行はありえないことを示しています。
この認定を必要としない規格が設定されたということは、地域自治体との共同の必要がなく、通常の車両として自動車会社の自由な販売が出来るようになります。

 

○新しい超小型モビリティの規格
これで自動車登録の超小型モビリティの規格は従来の0.6Kw以下で一人乗りの原付きと0.6Kwから8Kwで2人乗りの軽自動車規格準拠の認定規格に加えて、0.6Kw以上2人乗り60km/h制限の超小型モビリティサイズの型式取得の3種類になります。
この新しい型式は、認定規格と異なり超小型モビリティの規格を明確にしたものと言えます。認定では、新設計に費用がかかる車体やフレーム、足回りを軽自動車をそのまま流用することを考えて、サイズを軽自動車規格にしていました。それが原付きミニカーと共通サイズに型式され、文字通りの超小型としての車両取り回しに重点が置かれることを明示したように思えます。この規格を取得した車両はトヨタC+podのみであり、この結果超小型モビリティについてトヨタは原付きミニカーとなるコムスと併せて2規格をディーラーで販売するという事になります。

 

 

○超小型モビリティは次のフェーズへ
この型式規格の明確化により、超小型モビリティは社会実験のフェーズを終了し、運用の段階に入ったと言えます。ただ、社会実験により最高速度や定格出力の規定が固まったとはいえ、限定的な地域実験であった認定制度によるデータでは、その数値が実際の日本全域の道路環境や社会環境での適正数値かは確定できません。運用を実施しながら、ユーザーの使用状況、故障、整備実績、事故などの発生状況など、各種のデーター取得の必要性が有ります。これを国土交通省や総務省(警察)、環境省などが掌握するためには、大企業による運用試験データの取得を必要とすると思います。その意味で、実験都市を持ち、コムス販売整備の管理実績を持つトヨタがC+podが型式車両の主体となることは明らかでしょう。

 

○そしてまた新たなフェーズへ
このフェーズが総務省、警察による新しい移動手段としての道交法の規制緩和と対応していることは間違いないところでしょう。以降は、日本政府は多様な移動手段としてのキックボードや超小型モビリティ、所有形態としてのシェアモビリティ、モバイルモビリティ、MaaSなどを準備し、大排気量車両の1人乗車や利用者が極端に少ない公共交通機関などの過剰なエネルギー使用社会から、利用形態に合わせた最適エネルギー使用による省エネ社会への運用形態移行を構想しているとも言えます。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○AIは知能か
AIのアルゴリズムで成り立っています。多様なセンサーと演算や過去事象のデータベースに接続、交信可能な演算処理出力アルゴリズムであり、かつ処理結果に基づき動作命令を作成するアルゴリズムと言えます。具体的には、多様な現在事象の環境条件をセンサーや情報データベースから受け取り、現状を構築し、そのデータをデータベース上にある動作規則や過去データに関連付け、各種行動案の動作の結果から発生した過去の事象を比較対照し、結果が最良のもの唯をただ一つ選択し、その過去の最適動作をなぞることを制御系に対して指示する、という流れが典型的です。

 

○知能とプログラム
さて、これはアルゴリズムなので計算が必要ですが、現状では十分な解析がなされているとは考えにくと思います。以前に統合シミュレーションの作動システムについて関与していましたが、シミュレーター上で1クロック作動させるために何百というデータベースとの交信が発生し、1時間のシミュレーションに1日を費やすこともありました。
このことは十分に正解を検討する演算をAIが実施することは不可能であることを示していると思います。自動車の緊急停止などはリアルタイムの高速作動を要求されますので、実際には極めて簡単な演算しか実施していないのではないでしょうか。

 

○動物の知能
人工知能の知能という面ですが、動物が小型の脳で驚異的な複雑な行動を制御し、知能の高さを示すことがあります。よく言われるものに狩人蜂の獲物運搬の機能があります。狩人蜂は地中に穴を掘って卵を生みその穴に蓋をします。複雑な行動はその卵に与えるための獲物を巣穴に運ぶ運動です。獲物を捕まえると巣穴付近に獲物を下ろし、巣穴を隠した蓋を取り除き、再び獲物を咥えて巣穴に入り、卵の近くにおいた後に巣穴を出て、再び巣穴に蓋をします。様々な行動が連続した行動であり、人の0.0002%に過ぎない脳重量の虫がこのような行動をすることは脅威ですが、これは非常に無駄を排除して軽量化したアルゴリズムであることがわかっています。蜂は獲物を下ろす直前に獲物を落としてしまうと、目の前にある獲物を探さずに、ない獲物を下ろし、蓋を開けてない獲物を咥えて運び込む行動から最後の蓋閉めまで実行し、再び違う獲物を求めて飛び立ちます。つまりこのアルゴリズムにはデータベースとのやり取りも状況判断も存在していないのです。行動の複雑性は知能に関係がないことがわかります。

 

○機能的行動としての知能
生物の行動アルゴリズムを知能とすると、DNAや発現蛋白質などの遺伝形質と大脳や小脳なのが学習判断する後天的能力があります。このどちらかに行動を任せるかを生物は振り分けたと言えます。植物や無脊椎動物、昆虫などは遺伝子組と言えるでしょうし脊椎動物特に哺乳類は脳での学習と言えるでしょう。遺伝子の場合の進化や適応能力である多様性は多産による遺伝子のばらつきでしょうし、脳の場合は判断のいい加減さが決定のばらつきになると言えると思います。

 

○唯識的知能の異様性
その意味で哺乳類の脳は多様な学習と判断を多様にばらつかせるための乱数発生器のようなものとも考えられます。そうするとそのような判断の多様性が自己というものの発見までにいたりその判断を唯識まで認識させた人の脳の認識アルゴリズムは過剰だとも言えます。そして、AIにそのような人的な認識を求めるのはアルゴリズムとして正常な欲求なのかもまた疑問です。

 

○AI人工知能というもの
人はAIに何を求めるのでしょう。AIはデータベースに大量の記憶を劣化することなく全て保存し、その全てを判断材料に使用する事ができます。しかしながら記憶は正しい判断にとって有益でしょうか。
また、AIはデータを使用しアルゴリズムで判断しますので、判断には一貫性があります。たしかに個々の行動にとって最適な判断は一貫していることが有益ですが、社会全体や人類全体の生存にとって有益かはまた別な問題です。例えば、駆除しそこなった害虫から有益な抗生物質が発見される場合もあります。人もいい加減さが進化でも維持されていることは、いい加減さが種の生存に有益であることを示しているのかもしれません。

 

○AIの目的を明確化
その意味でAIは目的や役割を明確にして開発する必要がありますし、そもそも万能性の付与は困難でしょう。あくまでもデータ提供、あくまでも演算補助でなくては、いい加減な判断基準を持つ人は納得を得られないでしょう。その上でAIの最大の問題は回答を出してくれるということでしょう。正確かどうか判断しかねる結果であっても、AIなら同じアルゴリズムをたどりますから、何度でも同じ間違いを繰り返し、それを分散の少なさで精度という正確さとは別の評価で正しさを持たせる可能性があります。判断不可能、作動不能を正しく組み込みそれを理解するコモンセンスがなくてはAIはツールになりえないかもしれません。 

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○宇宙エレベーターとは
現在、地球の周囲には様々な高度、200kmから静止軌道3万6千kmまでに多くの人工衛星が飛行している。それらはその衛星の数だけ多数の宇宙ロケットで、その軌道に運ばれている。また400km上空にある国際宇宙ステーションISSは建設開始から22年、230回の往還が行われている。ここまで頻繁に大量のエネルギーを使って往還するのならば、エネベーターを設置したほうが便利ではないかと考える。富士山に物を運ぶのに人力では運搬力に制限があり、また誰でも行けるわけではないとしたら、登山電車をつければいいじゃないかという発想である。、
原理は簡単である。静止衛星軌道に重心が来るようなエレベータケーブルを重力と遠心力が釣り合うように設置し、動力付きカゴが釣り合いながらそのケーブルを上下しする装置であり、衛星や実験資材を必要な高度まで運搬し、衛星を軌道投入したり、宇宙環境での無重力実験をすることが出来ますし、もちろん特殊な訓練無しでエレベータ宇宙旅行が出来ます。

 

○構造
建設工程から構造と技術要素をみてみますと、大型ロケットを使って静止軌道に衛星を打ち上げます。その衛生から地上に向けてケーブルを下ろします。その時にケーブルの重量によって重心が静止軌道から離れないように反対方向にも釣り合いを保ちながらケーブルを伸ばします。ケーブルが地上に達したら大きなドーナツ型の建築物で3次元的な自由度を持って設置させます。人員物資運搬用の自走式コンテナであるクライマーをケーブルをつたい登らせて資材や人員を輸送します。その人員資材で、静止衛星や100km、400km地点などに衛星発射台、無重力実験室、居住区などを重心を釣り合わせながら建設します。

 

○重要な技術課題
・クライマー
 クライマーの動力は実は大変です。地上のエレベーターの動力はビル側に装備され、その動力も吊り下げるカゴは滑車で反対側に吊るした自重相当のおもりでバランスしていて、必要なのは搭載物の重量分だけの動力性能だけです。クライマーの場合はカゴの重量、搭載重量、動力装置の重量もかかりますので、高出力軽量で、3万キロまで移動可能な耐久性のある動力設計が重要になります。
・ケーブル
ケーブルに要求されるものは強度と軽量化の両立です。地球の垂らす分だけで3万キロその反対側にモーメントバランスのために10万キロでそのケーブルは静止衛星からモーメント均等を守って繰り出す必要があり、重量があると安定した繰り出しができませんし、重力と遠心力によってケーブルに張力が発生します。そのために高張力と軽量は同じ意味で重要になります。

 

○カーボンナノチューブ
高張力と軽量を満たすものは現在のところカーボンナノチューブしかありません。カーボンナノチューブとは1分子厚さのグラファイトをチューブ状に長手方向に成長させたシートです。ダイヤモンドでもわかる強力な炭素結合であり、かつ結合が均一なために加えられた張力が全分子に均等に拡散するために高張力を発生し、1分子構造のために軽量です。

 

○あまりにも高すぎるハードル
この宇宙エレベーターはとにかくハードルの高い構想事業です。簡単に思いつくだけでも宇宙デブリ対策、貿易風などのジェット気流対策、10万キロ間でのプラットホームを含めたモーメント整合対策、その中でも私が思うのはカーボンナノチューブの長鎖化限界です。
カーボンナノチューブが環状のグラフェンを誘電などの方法で結晶成長させて製造します。結晶成長には欠損の確率が必ずあります。カーボンナノチューブの張力を目的とした使い方ならば、格子欠損は応力集中しますので1点でもあれば使用不能です。同じく結晶成長で製造するシリコン基板などは出来上がった結晶柱をスライスしたものをX線などで検査して、欠損のないスライスをエッチングに回すので問題はありませんが、切繋ぎのできない構造で、結晶成長の10キロメートルを無欠損でなど考えられないのです。現状での成長限界は中国が50センチを達成したと言っているのが最長です。

 

○思い出す成層圏プラットホーム
製造に関して素材を知らないために失敗した事業として私が経験したものが成層圏プラットフォーム事業です。衛星の代りに飛行船を成層圏に滞在させて通信中継やサーベランスを行うものでした。空気の薄い成層圏は浮力の小さい空間であり、かつ浮力のガスは水素は禁止されているのでヘリウムしかありえないので、浮力には巨大な気球を耐水高張力軽量素材で作るしかありません。繊維メーカーに対処を図ってみましたがどうしても素材が構想できないとのことでした。
10年前のことですが、未だにその時点の候補以上の耐水高張力軽量織物はできていないようです。繊維では紡績からアパレルまでを川上、川下といった表現がありますが、川上の可能性を知らないで川下が失敗する話はありえると思いました。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○オリンピックとは
近代オリンピックのルーツであるギリシャの古代オリンピックは、その目的を不戦と友好に置いています。第一次大戦で近代が作り出した科学技術が国家間の継承や問題や領地の所有に関する紛争に過ぎなかった戦争をその時点での世界である欧州を2分し、しかも国家の存続を揺るがすほど人命の消耗戦になり、欧州に深い対立と困窮を招きました。欧州、特に貴族社会の社会調整能力を活用した不戦、融和ということで古代ギリシャのオリンピックの開催中の「聖なる休戦」に注目したわけです。

 

○古代オリンピックのシステム
・エリスとオリンピアとゼウス
オリンピックの開催ポリスはエリスという後進ポリスです。この力のない後進ポリスがオリンピアの近くにあったのが幸運だったのでしょう。オリンピックの会場であるオリンピアの地は、デルフォイとともにどのポリスにも属さず、ギリシア全体の崇拝を受けるゼウスの神殿がありました。オリンピックはゼウスを祭神として神に競技会を捧げる神事として行われたものででした。これは、もう一つの独立な聖地であるデルフォイが、アポロン神殿における巫女の伝える神託にが、入植の可否や戦争など、ポリスの重要な決定がなすことにより人々の運命とポリスの命運を左右するものとされ尊ばれたのと同様に、オリンピアは主神ゼウスのギリシャの存在に必要な祭祀のための聖地でした。

 

○聖なる休戦
・なぜ停戦したか
近代オリンピックは平和の祭典と銘打っていて、競技ができる平和な世界を作ることや、競技者が一同に介し同じ条件で競い合うことでの国際融和の実現を目指している。これは古代オリンピックの平和とは意味が逆である。古代オリンピックは競技を神への捧げ物とする神事であり、目的はオリンピアでの競技であり、聖なる平和は競技実施のための競技者の移動を阻害しないための主催国エリスからの3ヶ月の不戦要請です。

・オリンピックが最優先の訳
オリンピックの目的は全てのポリスが参加し、全てのポリス市民がゼウスを主神とする同じ神を信仰するヘレネスであり、内戦はあってもバルバロイに対しては共同して対抗するということの確認行為であったようです。その意味で自由人であれば貴族と一般市民を明確にしない裸の競技者の意味は、裸を神聖視するヘレネスと裸を猥褻で粗野とするバルバロイとの違いだけが重要という意味でもあったようです。その意味で宗教儀式としてのオリンピックは民族確認のオリンピックとも言えるものでした。つまり、参加することに意義があるのではなく、参加するだけでも意義がある大会ということです。
オリンピック種目で特に人気があったのは戦車競技です。の競技主体は馬や馬車の所有者であり、同等の力を持つ4頭の馬を所有できるのは貴族であり、4頭立ての戦車に騎乗するのは司令官級に仕える馭者である。土地所有貴族が領民から私兵を編成して軍隊とするギリシャでは、貴族すなわち司令官がオリンピックに参加するということは部隊から離れるのことであり戦闘を停止しているという証拠でもありました。

 

○なぜオリーブ冠だけで良かったか
・オリンピックのもたらすもの
参加することに意義があるということの理由付けとして、古代オリンピックの勝者にはオリーブの冠以外の授与はなく、2位3位は単なる敗者であったことが挙げられ、勝つことに大きな意義を与えていない事が挙げられます。
当然、現実は違います。オリンピック勝者とは競技に勝ったツワモノと言うだけではありません。競技はゼウスに捧げたものであり、競技者の肉体の完成度もゼウスに捧げたものなので、勝利者はゼウスに最も愛されたものということになります。彼らが得たものは神の祝福であり、その結果として彼の完成された身体は、神の恩恵を付帯したものになったということです。

・ポリスに勝者がもたらすもの
勝者の帰還がポリスにもたらすものも期待されています。それは勝者の迎え方にも現れています。各都市は城壁に囲まれていて出入りは城門からのみなのですが、オリンピックの勝者は城門を通らずに壁を破壊して入り、その後にすぐ城門を修復することで神の祝福にポリスからの出口を見せないで閉じ込めるという儀式をするそうです。このような待遇からも勝者は選手としてではなく、神の恩恵を授かったものであり、都市からの待遇や報奨は神の恩恵を留めるための捧げものであり、滞在費である。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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