1 子供の疑問としての1+1=2への回答
○1+1=2は何故なのかという疑問で算数が嫌いになる子供の感覚は、正解が決められていることへの疑問です。子供は、幼児で家庭保育から幼稚園へ行って、自分以外は譲歩できる年長者しかいない状態から譲歩できない同年の存在から自我の衝突による不自由さを感じます。ただその3歳、4歳の知能は不自由の実感だけであり、また幼稚園から帰宅すれば元の環境があるので多くの幼児は実感は余りありません。


小学校への入学でもっと大きな不自由に直面します。自己の主張や権力行使、権力者への懇願でも全く変更できない絶対的な正解の存在です。そこで、その疑問を助長するのは大人がやる1+1=2にリンゴ1個+リンゴ1個がリンゴ2個という説明です。大きな林檎と小さな林檎が同じ1個のワケがないなどの否定のための逃げ道を見つけます。そうして絶対的不自由への抵抗、あるいは絶対的な不自由からの逃避を正当化するわけです。

これに対して、子供の疑問の発意を理解できない大人は回答をしようとします。その結果、普通の大人程度ではそれに回答できる語彙を持っていないということに気がつくわけです。それによってこのことは子供の疑問を当然であり単純な疑問こそ難しい問題というレトリックに満足するわけです。

 

2 数学にとって1+1=2は証明の対象
○「ペアノの公理」という回答
ペアノの公理は1+1=2を説明しているわけではありません。公理を使って証明をしているが、それは論理学上明確でない+という概念を使わない場合でも、1+1と2が自然数的に同一であることを証明できるというものであり、1+1=2という概念自体を説明したものではありません。説明という意味では、自然数の並びを定義した時点で数学的には説明されており、カントの純粋理性批判で言われるような、1+1の中をどのように探しても2という概念は存在しないということを解消するようなものではありません。

 

3 1+1=2の持つ意味

○「1+1=2」の意味について考えると、論理的には左右の等価や左辺を用いた右辺の結合を示すものです。例えば、左辺に赤いという概念とリンゴという概念があるなら、右辺には赤いリンゴがあります。この場合、赤いリンゴには赤いという属性とリンゴという対象が含まれます。同様に、水と流れるという概念があれば、その合成物は流水であり、その中には川や水道などの概念も含まれます。しかし、1と+から2という概念を直接見つけることはできません。

純粋に論理的に考えると、1+1=2を説明することは難しいと言えます。修辞学的な観点から見ると、1+1=2に納得することはできません。

 

○「1+1=2」とは何か

ペアノの公理によれば、1や2は自然数の定義であり、1に単位数が1つ増えたものが2です。この定義は単純ですが、自然数の空間を論理的に重要なものとして規定しています。1は1であり、2は1+1であり、3は1+1+1であるというように、単位数の増加は一方通行であり、同じ数は二度と現れないのです。自然数の空間は分岐も循環もしない一次元の直線状空間で、1+1=2が成り立ちます。

異なる空間には異なる法則があります。例えば、角度の空間では0°+0°=360°という循環がありますし、2ビットの空間では0+1=1となります。このような空間では、1+1=2が常に成立するとは限りません。

 

4 1×1=1もついでに考える

○幾何学的には、加算は1次元の操作です。数直線上で原点を移動させて演算を行い、最終的な位置の差が答えとなります。

一方、乗算は2つの数直線を直交させて四角形の面積を計算する2次元の操作です。つまり、1次元の線分を1つ取り、もう1つの1次元の線分を縦横にかけることで2次元平面を作り出すと言えます。

代数的には、数値としての乗算は単純な数学ですが、現実世界では量の操作として理解されます。例えば、掛け算の順序は重要です。足し算では順序が入れ替わっても結果は変わりませんが、掛け算では単位によって異なる結果が生じます。このような操作では、数値の性質を保ちながら計算を行います。

掛け算と足し算を混ぜた演算においては、掛け算の結果が足し算の共通単位となる場合、掛け算を先に行います。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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1 人は何故画期的技術革新を求めるのか
○人は未来を見つめる。
人は未来を見つめています。若い時は、これから生きていく社会をより良く見ようとします。年取ってからは、自分の子供や孫が見る世界を美しくより進んだ社会出会ったら良いという思いが有ると思います。それは社会の利便性についても同じです。私が子供の頃、まだ蒸気機関車が走っていました。客車のドアは普通の家のトアで乗客が開閉して止まる前に飛び降りる人がいました。電話は呼び出しで、自家用車は夢でした。そこから現在を見ると、画期的な乗り物が出てくると思うのは当然かも知れません。
○社会進化論と産業革命
ダーウインの進化論は、生物が過去から今まで環境に適合しながら変化してきて、これからも変化するということを観察により科学的に論じましたが、社会学者はその論法を利用し、科学の進歩に従って社会は進歩するという説が広まりました。産業革命はまさに人間の進化に沿ったもので、科学技術はどんどん進んで社会は革命のように一変すると思われていました。
19世紀後半の電気や化石燃料の使用は、この社会に全く違う生活環境をもたらし、それは現在も少しペースを落としながらも継続していますので化学は進歩するものという意識は常識となっています。
○水木しげると藤子F不二雄の絶対効果
ある個人の頭の中の存在が、日本人全体の共通認識になることがあります。その例の典型が水木しげるが書いた妖怪の認識です。我々が妖怪を想像するとき、その構成メンバーの殆どは「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくる妖怪です。魑魅魍魎や鬼と言われた「あやかし」と言われるたぐいはすべて水木しげる氏の妖怪図鑑に取って代わられました。
その現象の未来技術版が藤子F不二雄氏のドラえもんの四次元ポケットから出てくる道具です。特に常識化しているものは「どこでもドア」と「タケコプター」でしょう。多くの人がモビリティを考えるとき、遠距離ではどこでもドア、近距離ならタケコプター、この2つがあったらと思うのが日本人の共通概念でしょう。この2つの道具を見ると、人間は移動に技術革新を期待しているというのがわかります。と同時に藤子F氏のようなSF作家であっても未来のモビリティは画期的なものを構想するのは難しいことを示しています。

2 移動手段は画期的技術ではなかった。
○空中と陸上と海上しかないわけ
藤子F先生の例を出した通り、意外と画期的な未来のモビリティ技術がないなと感じませんか。それは移動が空中か陸上か水面かに限定されており、移動機構がプロペラ(ファン)がジェット気流(水流)、車輪の回転、及び磁力線というように限定されてしまうからです。
○仕事の伝達は化学と物理と電気しかない
この要因は、移動が移動体から胴体周囲の物質に対して進行方向と逆の方向の力を働かせ反動を得る行為ということからきます。現在の動力システムで使われている力は化学、物理、電気です。化学とは有機物を燃やして熱による膨張と反応による膨張ガスを噴出させるものです。
物理力は、移動体に付いた車輪を回転させる事により、車輪が地面を後方に蹴り出す力の反力で前方に進む力を得るもの。または、ピッチという捻じれの付いた日本船の櫂のようなプロペラを回転させ前方の水や空気を後方に押し出す流力を生じ働かせます。
電磁力も近年実用化されています。移動体に電磁石で強力な磁力を発生させ、静止体にも磁力を発生させて、その磁石の反発や誘引を力として発生させで移動体を進める力にします。
○物理、化学、電気のバリエーション
すべての移動体の動力はすべての力に限界があります。移動体の動力はその力と動力機の規模がある比率で釣り合って、規模を大きくしても移動体が成立しなくなります。そのため単純な規模の大型化は成功しない場合が多いです。エネルギーによって胴体のパワーが決まると言ってもいいです。最もパワーが出るのが化学エネルギーでエンジンも化学の燃焼反応をそのまま圧力として利用するか、ピストンやタービンでプロペラの物理エネルギーに変換するかとなっています。物理と化学のエネルギー差は土木作業で発破をかける破壊力と掘削機の破壊力を比較すれば明らかです。電気にしてもモーターでプロペラや車輪の物理運動に変換するか、リニアモーターや電気泳動で直接噴出力で起用するかの2種類ありますが、現在主体の物理変換については規模の限界があります。

 

3 実現が難しそうなモビリティ
○大型飛行船
19世紀から20世紀に移る頃、飛行船は航空機に先立って大型輸送機としての有望な移動体の構想でした。御存知の通り、大型飛行船はヒンデンブルグの大事故により、水素浮体が危険すぎるという認識により、輸送の花形にはなり得ないとされるようになりました。その後の飛行船は小型の移動するアドバルーンのどしての使い方しか有りませんでした。
2000年代になって静音性、低消費エネルギー性と浮体の材料が開発され大型化することにより十分な浮力が確保できるという見通しから「パスファインダー(Pathfinder)1」や「フライング・ホエールズ」といったキャリアとしての大型飛行船が構想されました。
また、社会システムが高度化して、通信衛星では不足する常時安定した広帯域かつ広域のグローバルネットワークが必要になり、高高度に大規模な通信機材を搭載し、自国領土上空で長期滞空し、自国防衛に寄与できる大浮力飛行船による成層圏プラットフォームの構想もありました。
大型飛行船の決定的な問題は巨体と軽量の矛盾のバランスでできている浮体が強風時の離着陸と地上拘束が極めて困難であり、巨大な格納庫と運行が天候に左右されるという致命的なものでありました。
成層圏プラットフォームの方はもっと基本的致命的で、現在考えられる繊維材料とヘリウムでは、高層の薄い大気でジェット気流に打ち勝って成層圏に到達する上層速度が発生するような浮力は得られないと思われます。
○宇宙エレベーター
宇宙エレベーターは、軌道に人工衛星をロケットで打ち上げる代わりに、静止軌道上にケーブルドラムを打ち上げ、そこからケーブルを地表まで垂らして、そのケーブルを自力で登っていく動力付きエレベータ籠に衛星を乗せて上空まで運び、必要な軌道高度で必要な速度になるような高度で打ち出します。
このシステムではケーブル繰り出しや自走籠などが重要と考えられましたが、実はケーブルの実現性が最も低かったということです。軽量で十分な強度、伸縮しない強靭な材料はカーボンナノチューブしかないというのが技術者の意見で、カーボンナノチューブの長繊維化技術の開発時期がそのまま宇宙エレベータの実現時期だと思われていました。
その後カーボンナノチューブの長繊維化の動向を見てきましたが、分子欠損が一つでもあると強度が大幅に低下するため、欠損をを完全排除する必要があることから、10年かけても最長14cmにしかなっておりません。静止軌道高度の36,000kmを考えるとほぼ達成不可能な数値と考えて問題ないと思います。
○ハイパーループ
ハイパーループはもともとはスペースX社が構想した真空チューブ鉄道です。このシステムは、鉄道を空気抵抗がゼロになる真空チューブの中で運行することで、超拘束運行を可能視することが主体です。特にシステム高製品個々には技術的なイノベーションがなく、既存技術を組み合わせるというイーロンマスクらしいアイディア構築です。
単なる組み合わせというために、技術的繋がりに多くの無理があります。いくつか上げますと、半径2mでもサンフランシスコとロサンゼルス間600kmを真空に維持するエネルギー量は大変ですし、真空中は放熱が困難なので動力車の熱は問題です。また高速とは言いますが、鉄道やタイヤでは魔策係数からいって500km/hを超えての安全性、効率性は良好とは言えないと思います。まだ、故障や乗客の緊急事態など運営部分が明確に想定できない構造にしかならないのではないかと思います。

 

4 実現するけど交通インフラにはならなそう
○空飛ぶクルマ
日本政府も空飛ぶクルマをモビリティとして構想していますが、その構想のは自動車はありません。どう見てもドローンか小型飛行機です。ここで国交省は「クルマ」という表現の定義を。「個人が日常の移動のために利用するイメージ」を表しているそうです。
空を飛ぶということを簡単に考えてはいけません。ヘリコプターやプロペラ駆動の小型単発航空機を見ると外板構造体強度を影響するまで徹底的な軽量化がなされ定期検査で対応可能な歪みや亀裂は許容されています。より軽量化が必要な電動の飛行体は自動車というほどのトラフィック環境では安全が守れないと思います。また、電動ゆえのローパワーは天候も影響も受けやすいです。ヘリタイプの浮力は気球と大差ないので、ビル風でもコントロールできなくなる可能性があります。
○完全自動運転自動車
自動運転は5段階ありますが、現状ではレベル5は実現不可能というメーカーからの意見が多くなっています。レベル4ならば運転不能時には停止して、乗車員や遠隔管理センターの操縦者にコントロールを任せることが許されますが、レベル5では問題発生時にも避難行動、事故処理、修復、交通規制対応、対人対応など適切な処置を自力で行うことをメーカーに要求される可能性があります。停止して指示を待つ行為に対して、自動車側が対応しなくてはいけないシステムの負荷の上昇はあまりに高くリスクが大きい。自動車企業はビーコンや誘導軌道など道路インフラや指定ルート往還など環境を社会に求める必要があると思います。
○電動旅客機
空飛ぶクルマでも有りましたが、飛行機の電動化も環境対策として求められているようですが、電動モーターがピストン内燃機関と比較される自動車と、比較がジェットエンジンになる航空機はわけが違います。ピストンエンジンが飛行機を動かしていた時代は1940年代で、その後はターボジェットからターボファンへの大型高速航空機ルートとターボプロップとターボシャフトの中小型機、ヘリコプターのルートに分かれていきます。
電動が取って代われるピストンエンジンはプライベート使用やエアタクシーに使用されています。これを見ても電動モーターの航空機はドローンと対抗する存在であることが理解できます。
電動モーターの旅客機利用として創発以上のエンジンを持つ旅客機の1発をモーターに変えるハイブリッド航空機が構想されています。エンジンが製造できる大量の電気をバッテリー蓄電し、大出力を必要としない場合にエンジンからモーターに切り替えるの動力とするハイブリッド構成です。また、水素燃焼エンジンと水素燃料電池モーターを一つのエンジンに組み込んだコンバインドサイクルエンジンも電気モーターハイブリッドと行ってもよいでしょうが、この場合の水素エンジンは現在は水素ガスタービンで比較的中規模以下の旅客機で使用限定されるターボプロップのプロペラエンジンです。ガスタービンで液体水素タンク高額なコンバインドサイクルエンジンを組み込む効果があるとは思えません。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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1今回の選挙のや近年の選挙で言われる問題点
今回の選挙で選挙制度の非効率な部分がクローズアップされています。それを以前から言われている項目と合わせると、以下のようになると思います。
○直接投票用紙による投票は時代遅れ
○連呼する選挙カーの騒音
○売名行為のための立候補者
○費用がかかるが役立たない選挙看板
○パフォーマンスとしか思えない政見放送
これらのことについて考えてみようと思います。

 

2選挙制度の骨幹
○日本国憲法
日本国憲法が米国の草案によるのもというのは周知であり、また米国が民主主義の教科書通りに国民皆保険、国民皆年金、公営住宅、生活保護支給などの設立を誘導して平等な社会になるように設定したと言われています。
それは選挙制度においても同じです。完全な普通選挙の実施、選挙権・被選挙権の普通化、候補者間の機会平等など自由平等の徹底がなされています。前項でピックアップした、一見奇妙に感じられる制度は、この自由と平等の徹底した結果と考えることができます。
○公職選挙法
いわゆる選挙はというものは、公職選挙のことです。公職選挙は国政選挙と地方選挙に分かれます。昔は其々に法律が有りましたが、現在は公職選挙法で統一され、公職選挙法で選挙のあり方を示しています。
それは、第一条(目的)によって(本法律は)「日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする」
これを見ると、「憲法の制定意図を現実化できる制度であること」、「投票権の有る国民が選挙を通じて個人の意志を自由に発揮できること」、「選挙という行為すべてが公に対して透明性が維持されていること」、「選挙全体が、候補者、投票する各個人に対して平等であること」、「民主政治の育成に寄与できる制度であること」と読み取れると思います。

 

3問題点の検証
○直接投票用紙による投票は非効率
現在の投票行為は何十年と変わっていません。入場券を受け取って、それを投票場でしめして投票用紙を受けとり、仕切りがある記入場所で初めて記入し、用紙を折って投票箱に投函します。家の近くの投票場所は投票日、投票時間に限定されていること、自書する必要があること、投票場所に当人が出向く必要があるなどがあることなど不便性が言われており、期日前投票ではバスやタクシーを使った移動投票所を運営することはありますが、それでも投票所に行って自署しなくてはならないのは同じです。
電子投票や郵送投票は在外も簡単にできるため目指している自治体もあるようです。
電子投票や郵送投票の問題点は、投票者に自由意志が確認できないことでしょう。どんなシステムを考えても、現状以外の投票方法で強権により見張られて投票したという可能性を排除できない。また少なくても管理者にはアドレスやIPを解析すれば投票した人とその内容がわかるわけですから自由性が担保できないと思います。
○連呼する選挙カーの騒音
選挙カーの評判は悪いです。いきなりやってきて大きな音をさせて、通り過ぎたと思ったら直ぐ次がやってくるという印象が強いようです。候補者のできることは限定されています。選挙事務所の設置、選挙運動用自動車の使用(移動連呼)、選挙運動用はがき郵送、新聞広告、候補者宣伝ビラの配布、選挙公報、ポスターの掲示、街頭演説個人演説会があります。この中で公的なものを除き、広範囲に組織なしに事故の存在を候補黄できる行為は、選挙運動自動車による連呼行為のみです。長時間強制的に意志のない個人に呼びかけることは自由意志に反しています。割と短時間に過ぎ去ってしまう選挙カーによる連呼は拘束行為に当たらないギリギリの範疇だと考えます。
○売名行為のための立候補者
売名行為のための立候補者を制限することができるかを考えると、被選挙人の自由を制限できる要因に何が有るかということだと思います。立候補の自由の制限は制限基準を明確にしないと自由を制限できる道筋をつける可能性があります。売名行為の不利益と自由制限の不利益を比較して売名行為の不利益が十分に勝っているという必要があります。
ここで、投票者に対する売名行為の不利益を考えると、政見放送で時間を取られる、候補者看板が見苦しい、看板が大型化して費用がかかるしそもそも邪魔、などという多様な影響はありますが、それらの殆どは投票する人が感じる不快感です。それに対して現状に対する反抗をを抑圧すること、つまり政策無しで現職批判ばかり、などもある程度の投票人は不快に感じる場合があり、それと売名行為の境は明確にできません。危険性のほうが高いと思われます。
○費用がかかるが役立たない選挙看板
候補者が自身の立候補を示す行為は選挙制度にとって重要です。特に積極的に情報を収集しない投票者に対しては候補者の存在を伝えるのは大変です。かといって戸別訪問は動員力が資金力の差が公平性を失う要因となるので禁止されています。またポスターも掲示場所を確保するのに資金差が公平でないので禁止されています。場所を限定して公的機関が提供することで、掲示枚数と場所を制限するということで公平性を確保しながら候補者の顔を知らしめる方法としては良い方法だと思います。
○政見放送
政見放送はパフォーマンス化しています。政策よりも個人の表現のために利用することは批判の対象になっています。政見放送は、他者の名誉を傷つけたり、著しく風俗を害したり又は特定の商品や営業広告、宣伝を除き禁止してはいません。個人のパーソナリティ、キャラクター、アイディアを示すことでの共感を得る行為が投票行動に結びつかないと明言できない以上、候補者に対し、全く加工せず公明であり、候補者ごとの偏見なく平等な機会を与えることのほうが重視されるのは合理的だと考えます。

 

4現在の選挙制度は意外とよくできている
憲法の精神を真面目に実現しようとすると、現状の選挙制度が自由と公平と権利をすべて尊重した結果の上に出来上がっていることがわかる。米国のように郵便投票があったり、候補者名が印刷されてチェックで印をつけるようなシステムは、日本人にとっては制度を正しく運用させるには危険が多すぎると感じられる。また資金を掛けられる不平等さも市民の支援の度合いの現れで、厳密に一人一票という配分は単なる形であるという実情は、政治参加の権利に貴賤の差はないという理想を持った日本人には腑に落ちない。
これは他の国でも同じことで、日本国憲法でがんじがらめを不思議に思わない日本人にとっての選挙制度は他国を参考にしても仕方がないのだと思います。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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1 円安の円とは何か
○円安
連日ニュースで円安が話題になり、毎日今日は何円だと報道されています。円の価値と言われて、普通の人は自分が持っている財布の中のお金や預金の口座高が減ったような気がします。しかし…
○為替としての円
この円は我々が日常使っている通貨の円とは少し違います。国内で流通する通貨の日銀券の円であり、日本が発行する債権です。円は日本国内でのみ流通するため、他の通貨に触れる機会はほとんどありません。為替の円は、輸出入または海外投資、外貨返済型円借款の返済を外貨決済するのに必要な円で、決済通貨です。円が外貨と接触する機会は外為法の範囲か、海外旅行での現地での両替くらいです。また、日本では海外で得たり両替した外貨の持ち込み、または円の持ち出しは制限されており、外貨の影響は外為の範囲に限定されています。

 

2 為替取引の基礎
○為替取引は2種類ある
金融機関や為替ブローカーなどが行う国際間の外貨交換行為であるインターバンク市場と、企業が外貨で得た輸出利益を円に変換するための企業個人と銀行間取引があります。国際市場と言われ、為替レートを決定するのはインターバンク市場です。
○為替レート
金融機関やブローカーが参加するインターバンク市場の交換比率、成立価値比率が為替レートです。輸入業者や企業の取引や政府の関与では影響されません。銀行間取引であるインターバンク市場においてのみ決定されるため、個別の企業の需要や個人の対銀行取引が直接為替に影響することはなく、需要を見越した銀行やブローカーの意向が大きいと言われます。
○レートとは
レートとは比率という意味で、一般的には異なった種類の財を対価という形で同一価値基準化するためのツールです。直接の意味としては交換比率のことです。広くは労働者の時給などもレートとみなされますし、物品価格も異なった商品を金銭という統一基準に乗せるための基準といえます。国際間取引におけるレートは通貨為替のみでなく、貴金属や原油などに対しても使用されます。
○レートの決定は原油の例で見るとわかりやすい
原油レートを例に取ると、基本的にはまず原油の生産地毎に質の差があり、質は石油製品あたりの原油精製の経費を決定するため、生産地原油により価格にほぼ固定比率の差が発生します。それを前提として原油のレートは生産量と需要の比率で決まるのは市場原理通りです。原油総生産量に対する原油需要は、言い換えれば供給側の総量に対する消費者が支払える金額の総量という言い方ができます。多くの場合、消費者が支払える金額は大きく変動しないので、レートの決定は供給量によって決まります。
○他のレート
他のレートの決定も基本的に同じです。通貨も各国中央銀行の通貨供給量によりレートの変動範囲の概算は決まります。細かな変動は多くの金融要因が影響しますが、多くは通貨量です。ただ、現実の通貨量は物価上昇率などのインフレ要因が大きく発生しないように、中央銀行と政府が管理しますので、勝手に通貨供給を絞ったり拡大したりはできません。結果として極度にインフレを避けるなどしなければ、国力に適正な通貨量に釣り合うことになります。

 

3 輸出入の基礎
○輸出とは
改めて行為を分析すると、輸出とは自国内の資源、資本を使用して製造した製品またはサービスを国外に供給し対価を得る行為です。ここでは生産や国内での調達時の資金には自国通貨で問題ありませんが、海外市場で販売した場合に獲得できる通貨は外貨になります。外貨では国内での調達ができません。また、国内では従業員への給与は現金で支払うか、労使双方の了承により銀行振込で行われます。
○輸入とは
同じように、輸入とは自国内で消費する製品や原料、サービスを国外の市場で調達して国内に持ち込む行為です。ここでは海外市場は当該国の通貨で交換されており、物品役務の調達には当該国の通貨である外貨が必要になりますが、製品役務を国内に提供して対価として得られるのは円であり、そのまま海外での再調達に使用できません。

 

4 輸出入における円安の影響
○輸入品の円建て価格の上昇
外国での調達時のドル建ての原価が変動なく維持されても、円のレートが安くなれば、日本企業が購入に必要なドルを調達するための円がより多く必要になります。そのため、日本販売時の製品の材料費が上昇し、以前のままの利益率を得るためには国内価格を引き上げる必要があります。
○輸出品のドル建て価格の低下
日本の企業が生産した輸出品をドル建ての契約金額で納入し、規定通りのドル建て支払いを受けた場合、その売上を日本国内に持ち込むために円建てに換算すると、円安分だけの差益が生じます。製造時に材料や人件費の購入が円建てだった場合、為替差益はそのまま営業外利益として経常利益に加えられます。
○輸出企業の為替についての特徴
日本の輸出企業については、国内加工工場における原材料が輸入品の場合が多く、為替差益と同時に為替差損が発生します。為替の変動は企業努力によって原価購入契約を長期契約にして、単価当たりの価格を減額しかつ安定化させようとする努力を無効にする可能性があります。そのために為替差益を経常利益化するよりも、海外子会社を作って外貨をストックし、外貨だけで購入費、販売売上、海外投資を管理する対策があります。海外子会社にとどまる利益は10年間で約3倍に達しています。
○輸入企業の為替対策
輸入企業は為替による製品輸入価格の上昇を価格上昇で対応できるような環境が整ってきましたが、価格転嫁にはタイムラグが避けられません。その対応として、輸入業者は輸入品に対して付加価値を付けて再輸出し、輸出企業と同様な海外資産管理の海外拠点を確保する必要があります。例えば、原油輸入企業は石油製品の輸出を、鉄鋼会社は鉄鉱石輸入に対して付加価値を付けた特殊鋼材などの輸出を行っています。

 

5 現在の為替の実情
○為替量の限定化
輸出入時の決済に使う為替は海外代理店などを介することにより限定されており、外貨が見かけ上の売上高はともかく、恒常的に再生産を必要とする企業の利益に大きく影響することはありません。輸出主体の企業にとって日本円が必要となるのは、日本在住従業員への給与とそれに関わる給与各種控除と法人税支払いくらいでしょう。
○為替投機の拡大
これまで為替に関して実利用にのみ言及してきましたが、為替取引の参加者には「投機筋」と「実需筋」の2種類があります。文字通り実利用者は実需筋ということになります。投機筋は為替の変動を利用して売買価格差を利益として得ようとする投機利用ということです。投資と投機の違いは、対象に資産として資金を受ける利益があるかどうかと考えますと、為替は当該国が購入されることにより利益は生じないので、購入者の一方的利益追求であり、投機以外に需要しない部外者の参加は意味がありません。そこで取引手数料による利益拡大のために投機的売買を仲介することになります。
○投機とは
投資と言われるものに株式がありますが、株式には企業やその業界に対する知識が必要になることから、参入障壁が高いです。その結果、物価追随や日経平均連動などの投資信託に多くの人が頼ることになります。一方為替は通貨供給量、国債短期金利など参考にするものがそれほど複雑ではなく、レバレッジの利用も可能なので参加しやすいという面があります。このレバレッジは見た目の為替交換量を増大させるという効果があり、前述の実需の低下が相まって、実需と投機の割合は1対10で為替は実際は投機によって動かされているという事実があります。ただ、前述の通り為替はインターバンク市場での価格であり、銀行の売買は実需要に限定され、短期の取引の多くは実需要ではありませんので、銀行は余程の偏りがなければストックで対応可能でしょう。

 

6 円安にどう対応するか
○為替は利用するしかない
国や国際機関の管理が困難であり、為替変動による損得のみによって変動する為替への対応は限定されますが、結論としては為替を利用して利益を得るしかないということになります。
○輸出の促進
産業の生産物やサービスを国内基準だけでなく輸出向け基準を設定し、輸出向け商品を開発すること、また輸出先の開拓を実施するとともに、不利になる不正貿易に対して断固たる姿勢を取ることが挙げられます。
○二重価格
輸入品、特に石油製品等の原料輸入品に対して軽減税率を実施して負担を軽減する。またインバウンド消費に対して二重価格を実施して為替の国民還流を実施するということも考えられます。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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 楽天が苦闘している。通信会社が他の事業の利益をすべて食いつぶしているのが明確である。楽天は2017年にメガキャリアへの参入を実施した。誰もがその無謀さに驚いていたし、資本力と時間との大変厳しい戦いという認識は共有されていた。


 普通の感覚では、楽天がVMNOに参入した時に、楽天は雑多なVMNOを統合して、NTTのOCN、auのeーmobile、SoftBankのy-mobileに対抗する格安携帯の主要勢力として対抗すると考えていた。上手く纏め上げ政治力を確保すれば、回線借り上げでも通信料を確保できるような政治環境になっていた時代だからである。

 

 しかしながらメガキャリア化を目指すという選択をした。1985年の通信事業の自由化から20年遅れの3番目のメガキャリアSoftbankの企業としての成立が2006年であり、若い人だと楽天の参入は10年遅れでの4番目の企業が参入するかのように感じる人も多いかもしれないが、それは全く違う。

 

 そもそも通信事業の自由化は、電電公社の民営化と合わせて独占を禁止し、競争力により当時評判の悪かった通信サービスの向上を狙ったものであり、そのために政府は、競合会社なり得るよう電電公社は国際通信を分離し、au事業の展開会社KDDIの前身会社としている。

 

 少なくともauは国の意図により作成された企業であり、行政指導などもあって各企業やインフラなどを活用する道があった。auの前身であるIDOは複雑な企業体ではあるが、その中にJH、トヨタがあり、高速道路の路線に沿った光ケーブルを設置するとともに、トヨタ系列の販売店に通信局の設置が可能であった。

 

 Softbankはというと、その前身は日本テレコムであり、そこにはJRが創設した会社で鉄道路線の駅間通信回線をそのまま長距離回線に使用するというインフラがあった。また、日本テレコムは政府管理が強くなかったためもあって、外資系通信会社の日本参入標的にされ国際的な株式の争奪戦が繰り広げられた結果、かなりの資本注入がなされた経緯もあり、JRの無かった僻地への回線導入も可能になった。

 

 これらを見ても上位3社は基本的に政府による通信民営化の行政指導に乗っており、有利な条件である程度の支援のもとにインフラなどを手に入れられた状態にある。高度成長期以降地価の問題は発展の障害となっており、それは全く延伸しない新幹線網、繋がらない環状線道路網を見れば明らかである。インフラ支援のない状態でのインフラをベースとした事業への参加は極めて危険というのは誰もが理解できる。

 

 また、メガキャリアの需要が果たして増加するかの問題もある。メガキャリア保護のためか、日本では無料のWi-Fiネットワークがほとんど存在しない。存在したとしても、商業施設内、公共施設内及びその周辺に限定されており、移動する場合にはキャリアによるデータ通信が不可欠になっているが、これはインバウンド需要の大きな障壁であり、政府がJapan.Free Wi-Fiの設置を進めたが、その目処である東京五輪が無観客になり(通信会社にとっては幸運なのか)その施設は進んでいないが、インバウンド需要以外の需要は財政出動を伴うために、積極的でない政府は何らかの処置を取ってインバウンド客用の無料Wi-Fiを展開する可能性がある。


 このような状況を鑑み、楽天モバイルのメガキャリア化経費は、5G・6G化に伴い更に積み上がる可能性もあり困難と言わざるを得ない。


 やはり楽天はVMNOを追求し、安定化、多重化、高速化、回線使用料の無償化などを通信費の家計圧迫を苦慮する政府に張り付いて、有利な転回を確保するのが正解ではなかったかと思う。

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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AIなどを活用した自動車や介護など各種システムの自動化が進められています。人言の行動や判断の上位代行を目指す自動システムは、当然ですが人間の認知行動システムを基準にするものです。実は人間の認知認識行為は複雑にできています。この複雑性を理解することがロボットの不気味の谷現象などの自動機械の違和感を解消する要件だと思われます。

 

○人間の行動システム
・知覚と認識
人間は、「考える葦である」というように、頭で考えて行動する動物です。目で見た、匂いを嗅いだ、音を聞いた、物を掴んだ、苦味を感じた、これらの目、耳、舌、皮膚の感覚は夫々の発生源から刺激を感覚情報として知覚化されています。それらの知覚は、それに対応して行動する要因となる事象が発生したための知覚であるか、それがどのように発生していてどの程度に自己への影響を与えるかを認識し、選別しなくてはなりません。この過程がいわゆる事象の認識とも考えられます。
・認識と行動
認識した結果は行動への命令作成へ引き継がれます。認識されたある程度の影響度を有する事象に対して、中枢神経は過去の経験や知識を利用して、それに対する必要な行動をいくつか案出した後、その中から最適行動を選択し、また同時にその緊急性や行動の強度も決定します。その上で中枢神経は身体各部の関連器官へ統一行動に適するように調整された運動刺激を作成して配分します。行動は中枢神経により励起や抑制が円滑に統制された行動となりえると考えられます。
・意識と認知
中枢神経は、命令をしただけでなく、その結果としての成否についても含めて、実施した一連の知覚認識行動を統合して一塊の経験データとして認知して記憶します。その認知は実際の行動から不必要な部分を削除編集した極めてスムーズで、まるで認知や認識などの作業がなく、知覚し速やかに行動したような記憶です。初めて体験する知覚に対する行動はギクシャクしたもので、実際はそんなスムーズな行動ではないはずですが、行動記憶には思考判断過程を省かれた各器官の行動の履歴として記憶されます。

 

○理論からわかる不自然さ
・認識の時間差
人間の生理から考えて、感覚器官から脳までの神経伝達や感覚器官内での処理に時間が必要なため、脳が知覚情報を認知するのにはある程度の時間が必要です。特に視覚情報は、視覚細胞がドットで受けた光の情報を視床細胞がシーケンシャルデータに組み上げて、脳で形状に再度組み立て、それを形状と認識し、記憶にある過去の視覚データと比較してその物体が何であるかを同定するために、見えてから認識するまで本来は1秒近い時間が必要になります。この時差はちょうど対面型ロボットやスマートスピーカーとの対話時の間延びした、会話のタイミングの取りにくい状況で時折経験します。また、当然のように各感覚器官により認知に必要な処理に差があり、脳に送られ認識されるタイミングに差があって、実際には聞こえる声と動く口は正確には同調していないはずです。
・行動の定形性
人間は様々な経験をしていて、そこにおいて様々な現象を知覚し対応し、様々な結果を認識しそれにより多様な対応とその結果を統合して認識しているはずです。それに応じて新たな現象が発生し遭遇しても多様な対応が可能なはずです。しかしながら、緊急な事象においての実際の対応はいくつかの定形に限定されていて、緊急でも複雑な行動を取るためにはスポーツなどで訓練を重ねる必要があります。
・認知の前倒し
事象を知覚し認知する研究における実験で、被験者が赤色の光の円を見ていて少しの間知覚認識を停止させ、その後に知覚認識を再開したときには光が青く変わっていた場合に、知覚を停止した期間は青い光の円を見ていたと認識していたという結果があるそうです。認知される体験では、知覚の空白は空白でも前知覚の継続でもなく時間的にはありえない将来知覚データの前倒し補間されるということです。どうも行動のスムーズさを達成するために、知覚は後の経験を前倒しして認知する傾向があるようです。
・反射との類似性と相違性
知覚から行動に直結する反応に反射があります。刺激に対して必要な神経伝達を、中枢神経を介さずに脊髄から直接に運動系統に命令を発信する反応です。これはとても早い認知行動ですが、それでも刺激を脊髄を通過させる必要があります。明るい光に目を瞑る反射でも、全く見ないということにはなりません。最速反応である反射であっても、知覚して反応していてはスムーズな行動はできないということになります。
つまり、人間の行動を円滑にしている認知行動システムの多くは、認知、意識化を介さずに実施されているということと考えられます。

 

○意識の持つ意味
・中枢神経という誤解
中枢神経という言葉は、脳が全てを判断し身体各部や意識活動を統制しているということを示しています。しかしながらそれでは脳の活動である意識の速度に思考や行動が支配されるとうことになり、間断無い会話や円滑な運動動作などが不断に実行されているという実感とは大きく異なります。これは中枢という意味が支配や管理と言った統制行為とは異なるのではないかということを示しています。
実際は、知覚した或る事態の前兆と判断される事象に対して、実働する各器官が器官間で連携して自動的に中枢神経から独立して行っている行動がほとんどであると考えられます。
つまり、脳が支配して行ったと意識しているという認知は事実ではなく、人間に必要なある機能として各器官が独自に実行している行動を、意識が再構築行為により認知行為と認識したものであるとも考えられます。つまりスムーズな行為記憶は、既に実施他行動を認知した行動を脳が意識して実施したように組み立てているのではないでしょうか。

 

○行動からの意識形成とAIのエッジ・コンピューティング
・中枢神経による再構成の役割
人が経験した一連の行動が、中枢神経でスムーズな連携動作として組み立てられている理由としては、新たな知覚行動が発生した場合や既存の経験より円滑な知覚行動が達成できた場合に、前兆の知覚から行動完了までの自動動作の神経連鎖ライブラリーの構築や再構築ではないでしょうか。様々な可能性がある前兆で事前に行動を開始する知覚行動については、中枢神経の役割はこのようなライブラリーの作成が主体ではないでしょうか。
・AIの在り方
AIを知能としてスムーズな計算をするためにはこのような措置が必須だと考えられます。実際の行動は中央処理を介さずにエッジ間のデータ移送や行動刺激のやり取りによりなされる必要があります。中央の処理行為は、各エッジの動作データを収集処理してエッジ間のデータや行動刺激の伝達など、エッジの自律行動に必要なデータのリファインと、エッジの作業モニターでそれが間違っていると認識した場合の行動の緊急停止処理など緊急時の支配だけではないでしょうか。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○哲学と宗教
正法眼蔵の宗教性について考えます。
・哲学とは
人生・世界、事物の根源のあり方・原理を、理性によって求めようとする学問と言われています。これは、人間が見たり聞いたり経験している事物は、様々に絡み合って本来のあり方が見えなくなっているのを理性によって解きほぐして、事象の本来の姿を発見しようということです。あくまでも事物、事象であって、人間でさえも発生事象や思考心理などを事物として理解しようとするものです。
・宗教とは
一方で、宗教は哲学ほど明確ではないのです。それは宗教を表すにはどうしても人間の内的な行為である信仰という言葉を使わなくてはいけないからである。信仰は宗教の内的行動であり、信仰で説明するとそれは宗教を別の方向で見たことにしかならない。そえだけ宗教は定義しにくいということでしょう。信仰は信じることで理解することではないというのが宗教と哲学の明確な違いでしょう。
同じ観念論でもドイツ観念論が仏教やインド哲学の唯識と全く違うと哲学者が言うのはこの基本的立ち位置でしょう。

 

○正法眼蔵が正法たる所以
・拈華微笑と以心伝心
仏教を始め宗教は二面性があります。個人の不安や迷いに対応することと真理の追求といった面です。信仰の主体である民衆が必要とするのは前者なのは当然です。不安を持った衆生は様々な問いを出家に投げかけますので、出家は個々の不安に対して晴らす答えを衆生が自身で思いつくような導きをします。回答は個々の衆生が理解し生み出すために個人によって多様な仏教が存在してしまいます。釈迦入滅時から正しく伝承されるかという疑問への対応を要する事象はあったのでしょう、釈迦の悟った仏教の真理についてを確定することは常に求められていました。
禅宗がその回答として示したのが拈華微笑で、言葉によらない伝承が以心伝心で伝わっているということです。真理は言葉で表現できないというある種の諦めともいえるです。釈迦牟尼の正法眼蔵涅槃妙心からそれを正法としたのではないでしょうか。
・正法と悟り
正法眼蔵涅槃妙心こそ悟りでありそれ以外にはないとも言えます。悟りは何か生まれ変わりや闇が開けるようなものではなく、日常の世界で正法眼蔵に気付き、涅槃妙心に回帰することにあると言っているように思います。

 

○現成公案、夢中説夢の仏教性
・涅槃の存在
宗教の宗教たる所以は、涅槃のようなものの存在を説明するところにあります。衆生には、現世の苦難を受容して乗り越える代償としての事後保証として涅槃を信じるという、ある意味での安心材料です。また、日本において多くの人が宗教の宗教としての限界を感じるのもこの事後保証にあります。釈迦牟尼が仏教の中心に事後保証を置くなどということがあり得るのかという疑問は、正法を言葉で表現する正法眼蔵は答えなくてはいけません。
・現成公案
それに対する道元の回答が現成公案涅槃妙心です。仏陀の世界は、すべてのものが包み隠さず眼前に示されており、涅槃は現成の中にあるということともいえます。見つけること見つかるための気付きが必要なことで、これが修行であるに過ぎないのでしょう。
・夢中説夢
では現成とは夢中説夢の状態であると繋がっていると思います。夢中説夢は人生は夢のようなものであるという意味から、道元はそれを乗り越えて、夢中説夢以外の人生は存在しないとしていると言われています。涅槃は現世にしかないと言うか、現世にこそ涅槃を求めるべきであるということでしょう。見ているものが現実かどうかを求めるのではなく、見えているという世界を現実として受け入れてその中に安寧をみつけることが唯一の道ということで、これは唯識を基礎とした仏教の根本的な基盤基礎に立ち返るということでもあります。

 

○救いとしての悟り
・悟らずに救う仏教と悟らせて救う仏教
道元のみが正法を現実として捉えることを一歩勧めて、正法を言葉で記そうとしたということなのですが、正法を示さないことは他の多くの宗派で多様な表現をしています。真言では仏教の祆教と密教の二層構造とし正法は密教としたし、浄土宗では観無量寿経を基に、成仏は弥陀の本願として悟らずして救済する道を示しています。
・大乗に関する認識
大乗とは悟りに至る乗り物が大きいことを示しています。大きいとは誰でも、それは在家でもということを示していますが、悟りに到れることの例えで、生活を捨てて修行やを示しています。乗り物である限り、それは移動手段であることを表します。浄土などは弥陀の本願を船として極楽浄土へ運ぶと表現していますが、現成公案では眼前に涅槃が存在するので移動手段も船も必要ありません。悟りは現前にあって、その基盤は唯識であり、仏教の研究はひとえに唯識にあるということになります。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○MaaS(Mobility as a Service)とは何か
MaaS(Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人の家を出てから帰るまでを単位として、連続する移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や商業、医療、行政等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。

 

○日本のローカル交通網
元来、日本は公共交通機関の充実を図り、地方の小都市にも鉄道駅があり、そこからの路線バスが走っていた。家から目的地までシームレスな交通手段である自動車が地方では1家庭1台以上の所有まで行ったモータリゼーションにより利用者が減少し収益性が悪化したた結果としてローカル公共交通が鉄道はおろか路線バス、タクシーまでもが消滅しました。その後に核家族化とその核家族の主体である団塊の世代が高齢化し自家用車がなくなる時期が来て、交通手段がないことに驚愕している状況にあります。
日本のインフラ建設能力から言って、ローカル公共交通機関の新成や維持には困難性が伴います。その困難性を考慮しつつローカル交通の利便性を上げることがMaaSの目的と考えます。

 

○MaaSで実施しようとしていること
・公共交通全体のスマート化
公共交通事業のDX施策連携により、利用者ニーズに即した新しいモビリティサービスのネットワーク及びアクセシビリティにより、家を出てから変えるまでのシームレスなモビリティ情報の提供を実現する必要があります。
・AIオンデマンド交通の導入
AIオンデマンド交通とは、AIを活用した効率的な配車により、利用者予約に対し、リアルタイムに最適配車を行うシステムです。
AIオンデマンド交通として、自動運転車両を含むカーシェアリング、uber型ライドシェア、無人バスを含むコミュニティバス、デマンドタクシーなど各種のオンデマンド交通の統合した利用者登録、予約受付、利用者による最適なモビリティの組み合わせと運行ルートの検索と設定、そして運行管理等の一連の流れに必要なシステムの構築が必要になります。
・公共交通機関におけるキャッシュレス決済
全国で普及が進んでいる交通系ICカードの他、QRコードや顔認証を含む非接触型クレジット決済等の新たなキャッシュレス決済手段により参加モビリティに公平でありかつユーザーの負荷の少ない決済方式の導入を図る必要があります。
・公共交通機関における混雑情報提供システム
利用者がより自主的に、所要時間のための混雑回避とルート観光の優先条件などの希望に沿って運行ルートの選択が可能になるように、混行動計画設定や途上での柔軟な変更を可能にするための、判断に必要となる交通集中や事故、道路工事等の渋滞予測やリアルタイム渋滞情報を積極的に提供していくことが重要です。
・次世代モビリティ・システムの構築
地域の公共交通と物流について、オープンデータを利用した情報提供や経路検索の充実、スマートフォンアプリによる配車・決済等のICT化、自動走行など新技術の活用、見守りサービスや買い物支援の導入、過疎地域での貨客混載、マイクロモビリティやグリーンモビリティ、シニアカーの提供など多様なモビリティの分野との施策連携により、都市と地域の利用者ニーズに即した新しいモビリティサービスを構築する必要があります。
・法制度
現在、我が国の交通事業に関しては、道路運送、鉄道等の交通モードごとに事業法が定められていますが、MaaS により提供されるモビリティネットワークについて、事業者間の連携を潤滑にするために安全管理や経費分配、個人情報保護管理などの利用者保護等の責任を明確化する法制度が必要になります。MaaSアプリ運営事業者に対して、バス、タクシー、鉄道、シェア、レンタル事業者等の交通事業者間に統合的交通関連サービスが公平になされること及び利用者の最大利益となるようなシステム構築、運用などの義務化などを規則での明確化が必要でしょう。
・障害者、外国人等の交通利便の向上
MaaSによる交通サービス提供及びそれに伴う各種周辺情報、リアルタイム災害情報提供は、視覚障害者、要介護者及び外国人への対応機能の充実を図ることにより、障害者の社会参加及び訪日外国人観光客の移動利便性及び事故・災害発生時等の避難や代替移動手段確保により安全安心に役立ちます。

 

○実施内容から見たMaaSの限界
・絶対的な公共交通インフラの不足
MaaSは、鉄道、地下鉄、バスの潤沢な都市においては、地図アプリと既存の鉄道情報アプリでその殆どをカバーしており、その役目はラストワンマイルに限定されるが、地方郊外においては、新たな交通インフラの構築となります。交通インフラなしのアプリ開発のみでは移動不能かハイヤーチャーターなどの高額支出を要求する回答にならざるを得ないというのは意味を成さないからです。潤沢な交通インフラの地域まで移動する安価な交通インフラを構築する必要があります。
・絶対的な利用者の不足
極端な過疎、税の減収が明確な町村では交通インフラの選択肢がありません。絶対的な利用者の不足はカーシェアなど新たな交通インフラの構築も制限され、税収不足は自動運行のための道路施設整備、人件費を伴うオンデマンド交通の公的実施や補助金などが制限されます。
都市交通においても、MaaSの重点であるラストワンマイルの需要には不安があります。日本人は徒歩にそれほど抵抗がありません。徒歩の利便性を越えるようなラストワンマイルのモビリティはあまり多くありません。多数のユーザーが対象の大都市で、たかだか10分程度で歩ける距離にモビリティを提供することにMaaSの利益中心があるならば自動的な発展は難しいかもしれません。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○宇宙事業の区分
後発の産業であり、急速に技術主導で発展してきた宇宙技術は、ロケット発射の能力がなくては成り立たないために、ロケットというキャリアを基盤とする系統が明確であり、紡績という基盤の上にしか成り立たない繊維業界などと同様に大規模な川上の下に多様な川下が広がっています。また、川上のプラットホーム開発自体が巨額な事業であるために、宇宙開発はプラットホーム主体で進んできた技術であり、川下の産業の育成や理解が未熟でありまた可能性の模索中であり、事業の創生の余地が大きく起業機会があります。まず、宇宙産業を川上から見てみましょう。

 

○ロケット開発事業
実はロケット開発は大陸間弾道弾の開発であり、当然ながら国の事業でした。戦略武器の制限が始まった以降は透明性確保もあって、多くの国はロケット開発を民営に移行し、1980年のアリアンロケットから以降は米国においてスペースシャトルの退役もあって、米国を中心としてアリアンスペース(EU)、シーローンチ(USA)、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(USA)、Rocket Lab(USA、NZ)の民間企業が民営化しています。
ロケット開発は自動車などと同様に様々な産業の集合体です。メインエンジンとしての液体燃料ロケット、ブースターとしての固体燃料ロケット、姿勢制御システム、機器作動制御監視システム、地上管制との通信・テレメトリー、衛星放出システム、分散させ再突入廃棄などがあります。このようなシステムは一見は繊細で高性能を求める最先端な精密機械のように見えますが、実は機体の運動や燃焼の制御などに電子機器などのような高速性を求められておらず、ひとえに信頼性を極限に追求する謂わば、スクリーニングと信頼性確認試験の塊とも言える製品です。工数の塊になる製品だからこそ民間が参入できるし、参入効果が見込まれる商品で、信頼性と価格の費用対効果で競争され、また、一旦良質な製品ができれば様々な派生モデルが製品化でき、市場を専有できる可能性もあります。

 

○衛星開発
衛星にはその機能や規模によって様々な種類がありその開発難易度が異なります。長期間使用する場合には軌道維持のための加速エンジンが必要になりますし、指向性のアンテナやカメラを持つものは姿勢制御エンジンを必要とします。継続的な受信信号増幅などにある程度の電力を長期間使用する場合にはソーラーパネルが必要になります。
それでもロケットと同様に信頼性確保以外に宇宙に特有な機能などはありませんので、比較的取り組みやすい産業だと言えますが、少量多品種で需要傾向がどうなるかは、携帯電話の衛星中継化などの今後の宇宙利用次第でしょう。

 

○衛星運用事業
衛星はそもそも必要な事業に応じて運用されます。主な事業は通信、資源探査、位置評定、気象監視、地上監視、惑星探査などがあります。
通信衛星は基地局が設置できない地域への電話やデータサービス、広域へのテレビ放送、遠隔地の無人機器の指令や救難信号の中継、
資源探査衛星は赤外線吸光などによる森林データや温度差による水資源データ、各種スペクトラム分光データによる鉱物資源データが取得でき、採掘を希望する業者に対して供給する事業ができます。
位置評定衛星は3つ以上の衛星の位置とその位置にあった時刻、受信した時刻データを知ることで衛星の位置と自分からの距離から自分の3次元的位置を測量するシステムです。気象はミリ波レーダーにより雨滴を検知して、降水の規模、雨雲移動速度などを計測し提供します。価格の高い衛星であり、基本的に気象庁の管理なので衛星調達は公共事業であり、利益率は高くない。

 

○打ち上げ事業
衛星打ち上げには地域的制限があります。何よりも失敗して落下する場合を考えて十分な開放地が必要です。海ならば海面使用の告示をすれば可能ですが、陸上だと立ち入り制限を実施する必要があり、実施の可能性は低くなります。そのために海洋に面した地域を打ち上げに確保する必要があります。そして天候です。ロケットは初速は低いので、打ち上げ直後の雲中の氷塊は危険ですし、水滴は落雷の可能性があります。晴天率が高いことも重要です。また地球の自転による遠心力が高いと見かけの重力が減りますので、低緯度のほうが効率的です。このような理由で最適な場所で打ち上げ請負の事業に委託するほうが無理に自国で実施するよりも効率的になります。国内の打ち上げ施設は種子島と鹿児島と北海道帯広にありますが、日本の晴天率や漁業や航路による海面の専有の困難さから見て、企業努力では価格競争には参入できそうもありません。

 

○宇宙探査事業
宇宙の事業としての宇宙探査には望遠鏡等による観測探査と探査衛星を送って実惑星を直接探査する方法があります。望遠鏡による探査の目的として、第1に素粒子や重力波などの理論物理現象の実在証明としての始原宇宙や宇宙的事象の調査があります。これらの観測事象からブラックホールや暗黒物質など物理仮設が組み立てられ加速器などによる実証明に向かるわけです。
第2にはスーパーアースなどのように地球外生命探査にための地球型惑星の探査があります。これら2件は純粋に学術型の探査であり政府の学術研究費を主体とする事業にしかならないので規模は限定されます。
もう一つは往還できる系内惑星や衛星に限定されますが、資源探査です。希少金属やヘリウムなどの製造不能な元素を採掘、利用を前提とした地下資源の探査採掘です。現状としてはどのような資源でも価格的に釣り合うことは考えられませんが、月などから他の惑星に移動する場合などに現地で資源を調達する等の可能性はあるかもしれません。

 

○宇宙工場事業
以前から無重力や真空、クリーン、極低温度などの宇宙の環境を利点して、地上の環境では製造しにくい半導体原料や精密機器などの製品の製造工場を作ろうという案はありました。しかしながら、現在ではAIなどによる高速で精密な環境設定が可能になり、また、希少金属などの豊富な物質による代替も可能になり、電力供給や原料、製品輸送などを考慮すれば、大規模な宇宙工場建設など割りに合わないことが明確になりつつあります。

 

○宇宙移民事業
現在、イーロン・マスクの計画を始めとしていくつかの火星移住構想が存在しています。まだ、ロケット開発計画や長期間閉所生活実験など事業とは言いにくい実験などがなされている段階ですが、火星探査により水の存在がなければ酸素の供給源が確保できないので技術面以前の計画自体の実現性自体が0%を離脱できたわけではありません。この状態で生命の危険がある事業をどんな国であっても許可するはずがありません。

 

○宇宙旅行事業
現在実施可能と思われる宇宙旅行は3種類あります。第1は宇宙高度を頂点とする弾道飛行で、費用はいまのところヴァージン・ギャラクティック社で3千万円程度です。主たる観光材料は、漆黒の宇宙背景にした球形の地平に青い海と雲、それと僅かに透かし見える薄い空気層といった天体としての地球の実感、あわせてその宇宙空間中での無重力体験といったところでしょう。第2はISSや2027に計画されている宇宙ホテルなど低高度宇宙ステーションへの滞在です。費用はスペースXとISS使用で60億円程度です。観光材料は、何度も地球を周回しますので、各大陸の観察や超高層雷電などの上空気象の観察、星の観察、無重力を利用した宇宙実験や遊泳体験などかなり多様になりそうです。第3は月周回軌道の往還による月面観光です。こちらの価格は1回あたり1000億円近く掛かると言われているようですが、全くわかりません。観光資源は月面特に普通は見えない裏面の目視、月面越しの地球観察、地球周回軌道離脱時の第2宇宙速度の体験などでしょう。
この価格水準ではとても事業とは言えない。国の衛星打ち上げや宇宙ステーションへの物資輸送の固定契約でもないと事業維持は難しいのではないでしょうか。

 

 

 

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中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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○量子コンピュータが本格化
最近、量子コンピューターの話題がよく出ます。そもそも日本では、4月から8月までの5ヶ月間には新しい事業や技術の話題がよく出るようになっています。それは、来年度予算の編成手順に置いて、4月が省内の1次元案の立ち上げ時期であり、省内の議論と選別を経て、財務と折衝の上で最終提出時期が8月中旬であり、それまでに事業の企画内容や技術内容を財務の主査や主計官に認識してもらうことが重要だからです。そのために関係するメディアなどを通じてプロパガンダするわけです。
まあ、それは別にして、量子コンピューターほど実用性の説明とその技術内容の理解の差が大きいものはないのではないでしょうか。同様な先進技術である自動運転やカーボンニュートラル技術と比較して、また地球外生命体探査や新たな交通機関などと比較しても解らなさは群を抜いています。0でも1でもある量子ビットを使うから2進法の数値は全て表現できるということはわかりますが、それがどのような演算様式になるかは極めてわかりにくい。

 

○量子とはなにか
かつて原子と言われた物質の最小構成単位は、現在では素粒子と言われています。最もよく観測できる素粒子は光子と電子です。これらの2つは粒子性と波動性を持っています。光はよく知られていて、ニュートンリングで波動性を、光電効果では粒子性を示していて、波であり粒子であるということは学校でも習います。電子については波動性は明確に常識化していませんが、最新の原子モデルのおける電子の状態が電子の軌道回転ではなく、電子雲と言われる確率的な存在であることに関しては常識となりつつあります。この確率的存在というのは電子の波動性の別の表現になります。電子1個を2本のスリットに向けて撃ち出した場合にどちらのスリットも同時に通過した干渉現象を示すことから、電子は左右のスリットを確率的に通過しているということになり、それは干渉現象をもたらしているということになり、波動性を示すことになります。
このように素粒子は物質性と波動性を示します。
この波動性とは取りも直さずエネルギーの確率分布です。電荷も重力も定常状態ではエネルギーを保持できません。宇宙空間でボールを投げると等速直進運動しますが、これは慣性系では静止状態でありエネルギーを持ちません。エネルギーは確率分布することで波動によるエネルギーを保持することになります。
このような波動性と粒子性を持ったもの、別の言い方をすれば物でありかつエネルギーであるものを量子と言います。光子は回路制御が難しいので、電子を使いますが、特に電子について荷電粒子としての特性を使うときには電子、波動性を利用する場合に量子という言葉を使うように思われます。

 

○波動を演算に使用する。
波動は時間とエネルギーの2次元数であるので、存在自体が2ビットになります。その上に重ねることで足すことも、逆位相化して足すことで引くこともできます。特に重ねる事象と振幅変動が時差がないためにゲートなどがないためにデジタルよりも速度が早いといえます。
重ね合わせができますし、重ねたあとも現波動への影響はありませんが、重ねたものを分離識別することはできませんが、合成した波動には合成内容により特異的な多様な周波数の干渉波動が重ね合わさって発生しその周波数分布から多様なデータを取り出すことができます。波動なのでデジタルのように矩形信号ではないために、波動の有る無しについてどちらとも言えない領域が多くありますのでデータを統計的に処理する必要があります。

 

○アナログ的なデータ処理
このような波動を使った処理はアナログ的な重ね合わせになります。デジタル処理とアナログ処理は手法が全く違います。適切な理解しやすい計算例は中々ないのですが、量子コンピュータに適切かどうかはわかりませんが少し考えました。例えば、多く楽譜の写譜の中から比較によって正しい写譜を取り出そうとします。デジタル処理の場合には最小拍を時間単位として1音のデータをピアノの鍵盤ならば88音階で全曲、全パートをデジタル化して数字の比較をすることになります。
アナログの場合、楽譜上の全ての音をそのまま重ねてしまいます。その周波数をスペクトラムとして全写譜で比較すると、最も確率の高いスペクトラムが出てきます。
量子コンピュータはゲージなどでアナログ処理とは違いますが、感覚や考え方としてはこのようなものだと思います。ビッグデータから規則性を引き出す方法には適しているかもしれません。

 

 

 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC PARTNERS株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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