『AIと知能』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一


 

H3AIは知能か

AIのアルゴリズムで成り立っています。多様なセンサーと演算や過去事象のデータベースに接続、交信可能な演算処理出力アルゴリズムであり、かつ処理結果に基づき動作命令を作成するアルゴリズムと言えます。具体的には、多様な現在事象の環境条件をセンサーや情報データベースから受け取り、現状を構築し、そのデータをデータベース上にある動作規則や過去データに関連付け、各種行動案の動作の結果から発生した過去の事象を比較対照し、結果が最良のもの唯をただ一つ選択し、その過去の最適動作をなぞることを制御系に対して指示する、という流れが典型的です。

知能とプログラム

さて、これはアルゴリズムなので計算が必要ですが、現状では十分な解析がなされているとは考えにくと思います。以前に統合シミュレーションの作動システムについて関与していましたが、シミュレーター上で1クロック作動させるために何百というデータベースとの交信が発生し、1時間のシミュレーションに1日を費やすこともありました。
このことは十分に正解を検討する演算をAIが実施することは不可能であることを示していると思います。自動車の緊急停止などはリアルタイムの高速作動を要求されますので、実際には極めて簡単な演算しか実施していないのではないでしょうか。

動物の知能

人工知能の知能という面ですが、動物が小型の脳で驚異的な複雑な行動を制御し、知能の高さを示すことがあります。よく言われるものに狩人蜂の獲物運搬の機能があります。狩人蜂は地中に穴を掘って卵を生みその穴に蓋をします。複雑な行動はその卵に与えるための獲物を巣穴に運ぶ運動です。獲物を捕まえると巣穴付近に獲物を下ろし、巣穴を隠した蓋を取り除き、再び獲物を咥えて巣穴に入り、卵の近くにおいた後に巣穴を出て、再び巣穴に蓋をします。様々な行動が連続した行動であり、人の0.0002%に過ぎない脳重量の虫がこのような行動をすることは脅威ですが、これは非常に無駄を排除して軽量化したアルゴリズムであることがわかっています。蜂は獲物を下ろす直前に獲物を落としてしまうと、目の前にある獲物を探さずに、ない獲物を下ろし、蓋を開けてない獲物を咥えて運び込む行動から最後の蓋閉めまで実行し、再び違う獲物を求めて飛び立ちます。つまりこのアルゴリズムにはデータベースとのやり取りも状況判断も存在していないのです。行動の複雑性は知能に関係がないことがわかります。

機能的行動としての知能

生物の行動アルゴリズムを知能とすると、DNAや発現蛋白質などの遺伝形質と大脳や小脳なのが学習判断する後天的能力があります。このどちらかに行動を任せるかを生物は振り分けたと言えます。植物や無脊椎動物、昆虫などは遺伝子組と言えるでしょうし脊椎動物特に哺乳類は脳での学習と言えるでしょう。遺伝子の場合の進化や適応能力である多様性は多産による遺伝子のばらつきでしょうし、脳の場合は判断のいい加減さが決定のばらつきになると言えると思います。

唯識的知能の異様性

その意味で哺乳類の脳は多様な学習と判断を多様にばらつかせるための乱数発生器のようなものとも考えられます。そうするとそのような判断の多様性が自己というものの発見までにいたりその判断を唯識まで認識させた人の脳の認識アルゴリズムは過剰だとも言えます。そして、AIにそのような人的な認識を求めるのはアルゴリズムとして正常な欲求なのかもまた疑問です。

AI人工知能というもの

人はAIに何を求めるのでしょう。AIはデータベースに大量の記憶を劣化することなく全て保存し、その全てを判断材料に使用する事ができます。しかしながら記憶は正しい判断にとって有益でしょうか。
また、AIはデータを使用しアルゴリズムで判断しますので、判断には一貫性があります。たしかに個々の行動にとって最適な判断は一貫していることが有益ですが、社会全体や人類全体の生存にとって有益かはまた別な問題です。例えば、駆除しそこなった害虫から有益な抗生物質が発見される場合もあります。人もいい加減さが進化でも維持されていることは、いい加減さが種の生存に有益であることを示しているのかもしれません。

AIの目的を明確化

その意味でAIは目的や役割を明確にして開発する必要がありますし、そもそも万能性の付与は困難でしょう。あくまでもデータ提供、あくまでも演算補助でなくては、いい加減な判断基準を持つ人は納得を得られないでしょう。その上でAIの最大の問題は回答を出してくれるということでしょう。正確かどうか判断しかねる結果であっても、AIなら同じアルゴリズムをたどりますから、何度でも同じ間違いを繰り返し、それを分散の少なさで精度という正確さとは別の評価で正しさを持たせる可能性があります。判断不可能、作動不能を正しく組み込みそれを理解するコモンセンスがなくてはAIはツールになりえないかもしれません。 

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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