『梅雨に見る日本の気象』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一


 

日本の四季

・四季がある条件
日本は季節がある国です。それを日本の特徴とする人がいますが、緯度が±35度より極に近い土地には大体四季があります。これが四季があることの条件の一つです。また、内陸でないこと。内陸の場合、風による大気の移動が少ないこと、比熱が低くく、また雲ができにくいため熱放射がによる放射冷却が大きいために、寒暖差が大きくなり一日の間に夏と冬があるという環境になり、1年を分割する季節という感覚にはなりにくい。そういう意味で季節は海洋性の気候が必要です。また、季節が変わるという感覚は、国内に少なからずの時間差があるほうが感じやすいので、南北に長さがあるか、平地と山地が接近している方が季節を認識しやすいでしょう。

・36度±23.4度の効果
25度以上と言ったのは、赤道付近では季節による日射量の変化が少ないため、季節変化を細かく分解することができないからです。また35度付近が良いと言ったのは、北緯45度付近の最も投影面積変更が季節による日射量変化が大きいが、北緯45度になると12月から2月までは氷点下で、季節感が固定してしまうため、また降雪があるのであまり温度が下がらない。季節感があるのは最低が0℃以上である北緯35度程度だと考えます。
その結果として夏の日射と冬の日射の熱量の差が大きく、陸上の温度上昇の差が大きくなり、地面の温度の影響が大きい気温の低下と、より一層日照が減少し高緯度からの寒気が流入を起こします。

・夏の期間を圧縮する雨期がある。
日本の5月は日照入射角度的には亜熱帯であり、通常の天気周期ならば5月の中旬から夏の気温になるはずであるが、日本には6月早々、西日本では5月中から梅雨入りして、雲による日照の遮蔽と降雨による地上の冷却が発生します。雨天では晴天に比して1日の平均気温は5度から10度の低下が見られます。よく言われる月の平均気温の前年同月比較での上下は単に雨天の回数だったりします。このように梅雨の存在は夏の到来を遅らせます。同様に9月は未だに海水温は最高水温であり底から来る南風の存在は通常ならば10月半ばまで真夏の気温をもたらします。しかしながら秋雨前線の活動は梅雨の場合と同様に雲と雨で気温を引き下げ秋雨は夏の終りを早める効果があります。梅雨と秋雨は日本の夏を削って、他国ではありえない長い春と秋を形成していると思われます。

日本の雨季

雨季というと熱帯性の雨季をイメージする事が多いですが、熱帯の雨季は単に日射で熱せられた水蒸気が夜間に冷えた陸上の山などにぶつかって雲を形成し雨になり、日射により地上が温められると雲が消失するようなもので日本の亜熱帯や温帯の雨季は違います。
日本には雨期が3回あります。そして夫々の中心となる地方が違います。まず、6月から7月の梅雨でこの中心は西日本です。これは太平洋高気圧が北上するときに東海道の長い海岸線で一旦止まり、大陸から伸びてくるジェット気流が形成する停滞前線に接続して巨大な降水帯となるからです。太平洋高気圧が北上し列島を覆うことで消えた前線は、逆に秋になるとシベリア高気圧とオホーツク高気圧に押されて気圧の谷が南下する時は太平洋の北で太平洋高気圧と移動性高気圧によって止められます。そこで長野や北関東に前線が停滞します。
もう一つの雨期は冬の北陸から秋田までの豪雪です。シベリア高気圧は東アジアに乾燥した寒気を北風としてもたらしますが、日本についてのみ海洋を超えているために北風が湿潤な風になります。

梅雨の正体

梅雨の西日本が豪雨災害になる理由は、その前線の南北の温度環境が明確に違うところにあります。日本の梅雨は、東アジア全体に前線帯が停滞することで起こります。梅雨期には、亜熱帯ジェットがチベット高原の南側を、寒帯前線ジェット気流が北側を通ります。亜熱帯ジェット気流は山脈を過ぎて時点で平行している北側の寒帯前線ジェットのトラフと相互作用することになります。そのジェット気流の速度のために,そのトラフは対流圏中層まで達する正渦度をもつ長さ2000kmスケールの梅雨前線となり連続して低気圧をその線上に発生することになります。その結果この低気圧の後面では、梅雨前線に沿って連続した雲列が形成されるます。
つまり梅雨前線は、通常は地上まで達しないで、地上に前線を作らないはずの亜熱帯ジェット気流の偏西風が地上まで達することによりその高緯度側に降水帯が形成され、かつ地上の前線帯の下層では梅雨前線帯に向かって低緯度側からの風の吹き込みがあり、この風が亜熱帯高気圧の西縁の海洋性の気流であり、前線帯に連続して水蒸気を供給すると共に、その吹込みが前線帯に沿った風と合流収束することで、前線が常に強化され続けるという珍しい長時間連続降水機構を作り上げます。40日間全く日照がなく大量に降水するという珍しい機構が出来上がります。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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