『SDGsの本質』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一


 

SDGsに関する誤解

・環境問題ではない
SDGsを環境問題化しようとしているグループはたくさんあります。サステナブルという言葉が環境による生物や人間の生活環境悪化を想像させるため、各種の環境悪化要因を排除する運動を目標に掲げる可能性がありますが、現状を排除する過激な計画は社会や経済システムの継続性の分断であり持続性を破壊する行為はである可能性が高いと思います。

・食糧危機ではない
飢餓問題を食料問題とすり替えている場合が多いです。食料は一定量を世界で奪い合っているものではありません。食糧増産には年単位での計画期間が必要であるため、当該年度での食糧不足があると価格高騰により途上国での確保が困難になりますが、これは事故であり食糧問題ではありません。食料生産は、生産量と消費量のバランスを販売価格と生産価格の差である生産者利益を極大に確保するように生産調整されます。持続性とは取りも直さず生産者利益を確保するための生産量拡大を継続することに他なりません。決して一定食料を先進国消費分から途上国消費用に配分再編することではありません。

・現状否定ではない
現在の社会は人間の行為により持続性不可能な社会になっているという主張でもなければ、社会を否定して持続性を獲得するためには変革を主張する計画ではありません。持続性は成長であり、現状の産業や消費経済の成長なくして成長を維持することはできません。節約して経済を縮小することは持続性の喪失に直結してしまいます。あくまでも現状の社会を維持した上での開発、成長です。

UNDFのSDGsを見てみると

UNDFのSDGsを見ると何に注視しているのかなんとなくわかってきます。それは国連のほとんどであり多数主体である途上国が何に困っていて、G20なら20カ国、OECDなら38カ国と言われる先進国に一体何を要求しているかということの表明に他なりません。いくつかを見てみます。

・貧困問題
貧困という表現は食料、飲料、衛生、その他ライフラインインフラの欠損状態を総括して示しています。その中でも基準を1日の可処分が1ドル25セント以下という基準で見た場合の集団を貧困問題を有する社会集団ということにしています。あくまでも社会集団という意味での貧困であり、途上国民が所得を得られる社会にするという意味であって、先進国は金を渡せという意味ではありません。

・飢餓問題
UNDFはこの飢餓問題を単なる食糧問題としてみてはいないません。ここの飢餓とは飢饉のことを示しています。先進国では飢饉という意識は感覚的にありませんが、旱魃や環境悪化により作物が取れない状況がまだ存在しており、これを克服することと言っています。その意味は飢餓地帯での生産力の獲得であり、先進国からの食料の配分を目的にしたものではありません。

・衛生医療問題
衛生の本質は、小児の死亡率、出産女性の死亡率を特に問題視していることにあります。ここで目的としているものは、医療環境としての生活環境の改善と基本的なワクチンなどの必需医薬品の価格を低所得国が国民全員に摂取できる水準に維持することを望んでいるのであって、難病患者の国外治療やワクチンの無料供与などではありません。

・教育を受ける権利侵害問題
教育は全ての人に初等中等教育を受ける機会を与えることを目標にしていますが、その達成障害としては、貧困率や武力紛争、その他の緊急事態といった大きな課題を上げています。この全ては社会問題であり、当該国の体制が障害、特に内戦や国内紛争を克服することを要求しているのであり、先進国には紛争解消への協力を求めているのであって、募金で学校を建てることを求めているのではありません。

・エネルギー問題
エネルギー問題については、一般の考察に齟齬はないようです。代替エネルギーの開発と省エネシステムの構築を目指しています。しかしながらその目的にあるのは、全ての人に電気を供給するということであり、この点ではこの開発には明確なルートは繋がってはいません。

・経済問題
経済の目標は雇用です。起業、第一次産業従事者を含めて、職を持って労働し、その対価を得られることで奴隷労働、小児労働、不当賃金などからの開放です。そして、そのツールは技術革新と経済成長による生産性向上でしょう。

UNDFの思惑

・求める優先順位
UNDFがSDGsで求めているのは、途上国の生活改善です。14項目の多くが途上国が豊かになれば解消してしまう事項になっていることが、何よりもそれが優先であることを示しています。グローバル経済が国際流通を加速させることにより発生するのは途上国の生活改善よりも、自然破壊や資金集中による格差拡大、途上国の貧困化になりかねない状況が見られます。自然の自由な経済活動では、たとえ公的支援やボランティアの力を持ってもなんともしがたい環境にあります。これを何とかすることにあります。

・UNDFの思惑
ここでSDGsを使ったのは、開発途上国の開発を先進国の責任にするためであると思います。その2大役割は途上国の紛争解決とフェアトレードをグローバル企業に強制し利益の収奪を規制することです。併せて、経済成長して途上国産品の需要拡大をする必要があります。

先進国の思惑

しかしながら先進国側は単なる途上国への開発援助とは考えていない可能性があります。

・新たな食糧計画
食料については、生産量を向上させる理由でゲノム組み換えやハイブリッド種子などにより農業生産全体を先進国により掌握することが出来ると考えている節があります。

・エネルギー覇権
エネルギーや発電所建設などにより途上国の土地や港湾使用権を獲得して衛星国化する可能性があります。

・製造業覇権
途上国にプラントなどを輸出する場合、先進国は技術移転を制限し、グローバルサプライチェーンに組み込むことで途上国を安価な労働力の供給源化する可能性があります。

・知財防衛
製造やIT産業において、ある程度の知財の途上国への移転が必要ですが、先進国の知財を抱え込み、または知財権を無視して人材知財を独占しようとする可能性もあります。

・南北問題の東西問題化
各種覇権化はグローバルチェーンを確立することで大国間の2極対立に組み込まれ、新たな東西問題を先進国と途上国間で発生させる可能性があります。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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