『自動車のスマホ化について(イーロン・マスク氏の発言から思うこと)』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

イーロン・マスク氏の発言

民間の宇宙企業に資金援助を行う非営利団体XPRIZEが、設立者のピーター・H. ディアマンディス氏をホストに、イーロン・マスク氏と対談を行いました。
その対談で、イーロンの口から自分の火星移民計画について、「・・火星に行ったら最初はたくさんの人が死ぬでしょうね」という話をしたことが話題になっています。Gizmodeで日本語訳されている言葉は、「火星行きはお金持ちが脱出する手段ではないよ、危険だし快適でもない。長旅だし生きて帰還はできないだろう」「だけど栄誉ある旅だし、驚きの経験になるよ」「食事は良くないだろうけどね。ていうか正直言って、最初はたくさんの人が死ぬだろうね」「行くのはボランティアだけだよ」と続きます。

▼Gizmode記事

イーロン・マスクの商品構想

この話は、イーロン・マスク氏のかねてから言っている企画や製品に対する考え方がよく表われていて、氏のテスラを通じた自動車や他の交通機関の開発や製造、販売における製造責任の限定化、いわゆるスマホ化と言っても良いものの推進と実践をしていることがわかります。
これまでの様々な製品においてもイーロン・マスクの考え方は共通しています。それは、自分が作る商品を購入したり企画に参加する人は、自分の革命的商品や画期的企画の開拓精神に賛同する人であり、購入者が自発的に氏とともに冒険者、開拓者として新しい時代の礎というか殉教者なろうという人である。だから、エベレストに望むヒラリー卿や南極点に向かうスコット、大西洋横断に望むリンドバークのように率先して命をかけてほしい。
そのようにしてこそ、氏の商品は他の企業と異なって、一般企業が安全を優先する結果として機能や性能に制限を加える事による革新性の喪失を排除でき、商品開発において時間や金を浪費しないばかりでなく、商品宣伝においても現実の機能性能よりも、未来性、可能性を強調しユーザーの夢を掻き立てます。テスラがリコールやクレームに対応しないのは納得するべきということでしょう。

自動車のスマホ化

これは、ソフトウエアの新製品にはβ版というものがあります。商品を販売前にソフトウエアの知識があるユーザーに、半完成品を無償または安価で先立って提供し、多数の使用実績からわかる不具合や使い勝手の改善点を報告してもらうという手法です。
これを絶対安全を保証するべきと言われた自動車やその他の交通機関に適応することこそが、自動車などのスマホ化といえる考え方でしょう。提供しているのはツールであり、毎年のように改善が行われて、マニュアル通り使わなかったらトラブルが発生したり、普通に使用していてもツールが故障するのは当然で、故障はツールが安価に迅速に提供できるという特徴の反面に過ぎず、ツイールの付帯として受容するべき特徴に過ぎないという感覚です。
日本の感覚では無責任のように感じますが、鉄道や自動車の文化が発生して、各種安全機構以前の古い車両が大量に現役の欧米では、航空機関に対する感覚は日本と異なり、これに対する賛否は明確に言うべきではないでしょうが、安全性や排ガス規制、省エネ競争などで画一的に向かっている自動車産業から、滞っている超小型モビリティやマイクロカーの原付化、グリーンスローモビリティなどを起点として、高性能側を含めて多様性に向かう可能性になればいいと思います。

▼Youtube

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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