『軽自動車とEV -軽自動車電動化- 』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

軽自動車の電動利点

実は最初のEVは軽自動車
2021年3月でi-MiEVが生産終了しました。日本のみでなく世界で最初の量産市販EVであり、2009年から2018の小型車移行を経て2021年3月まで販売されました。残る軽自動車EVはMINICAB-MiEVのみとなります。10年以上の販売期間に追随する軽自動車はなく、自動車販売台数で5割近くのシェアを持っている軽自動車こそがEV化の商店になりますが、EVはおろかPHV、シリアスなHVも新規の販売がなされない状態は何故でしょう。

軽自動車こそEVが適している
(1)出力
サイズのみでなく排気量でも厳しい足かせがあるガソリン車と異なり、EVの場合、登録枠は車両寸法(全長・全幅・全高)で決定するため、定格出力や最大出力、電池容量などで規制されないので、出力に余裕を持たせたり、容量にバリエーションをもたせたりといった自動車が作れるのではないでしょうか。

(2)走行距離
軽自動車はもともと短距離通勤や買物、通院等走行距離が少ない。統計データを見ても1年間に7000キロ程度の使用が多く1万キロが普通の普通自動車と差があります。1日の平均走行距離も30km以下で、電池容量として実働30km程度の走行距離でも多くの需要が可能であると思われます。特に通勤やレジャー使用のないセカンドカーや高齢者の所要が確実に一定割合あり、長距離使用の頻度がほぼゼロの層が十分見込めると思われます。

(3)容積
軽自動車の近年のボディスタイルを見ると、多くはルーフが高く、ボンネットは小さく、ほとんどワンボックスのトールワゴン車であり、スタイルよりも容積を求めていると思われます。その点でEVはモータ容積が減る環境にあり、プリウスなど発売当初の5.1リットルから半分以下の容積で2.2リットルとコンパクトなっています。ガソリンエンジン車の30リットルの燃料タンクとエンジンの容積を考えれば電気自動車による車内容積の増加も可能だと思われます。

電動化の問題点

EVが選択されない理由
(1)実は、充電よりガソリンを入れるほうが面倒がない。
ガソリンは均質化して、給油場所をえらばない。その上、エコカーは1リットルで20km走行可能なので、平均30リットルの燃料タンクで1日30km走行では20日間給油の必要がありません。この利便性はかなり大きいものとおもわれます。

(2)特にエンジンなどを意識しない。
近年のボタンによるエンジンスターター、アイドリングストップでのスタート機構も高度化し、CVTなどの無段階変速があれば、特にユーザーはエンジン存在などを意識しないで生活している。ユーザーはこの点についてはEVになっての利点は感じないでしょう。

(3)中古車の問題
自動車部品の信頼性、耐久性はかなり上がっており、軽自動車は走行距離の関係もあって、事故歴さえクリアすれば下取り価格が下がらないので、購入時の高価格化が大きな問題にならない。この点は使用環境によって電池寿命が大きく変わり、高額な電池交換が発生する中古EVに対する不安は如何ともし難いでしょう。

(4)所得層の問題
購入層調査で軽自動車は400万以下が40%で車両価格と維持費は購入の主要な要件でしょう。これでは中古による値落ちも期待できないEVが普及するはずがありません。また低所得者の持ち家比率が低く、自宅に充電設備が確保できないため夜間長時間の充電ができないということも考えられます。

マイルドハイブリッドという選択
モーターが小型化したとしても、全く違う駆動機関を軽自動車に搭載することは容積的にまた重量的に不利な状況にしかなりません。電池と駆動機関が限定的なマイルドハイブリッドで発進・加速時のエンジン高回転のフラット化によるガソリン消費節約としての活用しか選択できない現在の状況は理解できます。

軽自動車EVの実現法

社会インフラの充実
EVの増加には軽自動車の使用者層の中心である中低所得者に対して充電インフラを提供する必要があります。それには所得制限のある公営住宅に積極的に設置する政策が必要でしょう。またそのような住宅にカーシェア施設を設置して、一括管理する方法も考えられます。

規格免許の細分化
(1)細分化可能な機能の発生
近年の自動運転に向けた運転支援機構の進展は目覚ましいものがあり、様々な支援により運転者に必要な技能や負担は低下します。また、「多様な交通主体の交通ルール等の在り方」等によってミニカーの原付化、講習のみの19km/h以下の車両などが構想されており、それならば、必要な技能により教習期間や費用を節約する免許取得コースが有っても良いのではないでしょうか。

(2)高齢化による不保持
近年、免許返納やそれによる自家用車の不保持が増加化しています。視力や判断力、反射速度などが老化の要素ですが、これは安全装置、運転支援機構、1日の走行距離など免許限定で、ある程度は保有期間の延伸余地はあると思います。

(3)マイナンバーを利用した自動車運転資格のプライベート化
マイナンバーを健康保険証や免許の同一データベース化が計画されています。納税、保険加入、障害や健康データ、電子カルテなどを多様に一括管理できたならば、運転可能な車両の限定もユーザー個別に管理できるのではないでしょうか。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

 

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