『電気自動車ベンチャーの誤解』青山先端技術研究所/エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

電気自動車ベンチャーへの期待

一時、と言っても数年前まで、電気自動車開発のベンチャーがたくさん立ち上がりありました。それは、当時というか今でもメディアが盛んに言っているこの事が原因でした。それは、日本において1970年以降に起業した自動車メーカーは光岡自動車1社であり新陳代謝が全くなされていないが、環境問題により電気自動車が必要とされる時代になり、エンジン設計がいらなく電気配線だけで走れる事になり、電気関係の企業を始め様々な企業が自動車産業に参入できる道がひらけたという内容です。これに、米国におけるGoogleやアップルの自動運転アルゴリズムを武器とした自動車製造参入の話もあり、また、欧州や日本における電気自動車による超小型モビリティ構想などがあって、ベンチャーの参入障壁が低くなったように見えました。
特に国土交通省が推進する「地域交通グリーン化事業」に対応する超小型モビリティ構想は、公道走行を可能とする認定制度を創設し、地方自治体、観光・流通関係事業者等の主導による超小型モビリティの先導・試行導入の優れた取組みを重点的に支援することにより、地域の電気自動車の積極採用に希望が見られました。

電気自動車ベンチャーの障壁

しかし現在、家電企業に自動車会社になれというアドバイザーはどこにもいません。これは何故でしょう。
自動車開発には困難な点が2つあります。一つは、簡単に走っているように見える自動車は実は大変高度な技術で走っているということと、もう一つは自動車が多くの犠牲者を生み続ける許容されている社会という面があり、存在し続けるためには、常に交通における安全性確保に向き合っていなくてはならず、その約束として道路運送車両法に基づき自動車製造には型式認証制度、運行には車両検査などの遵守が求められています。
1つ目ですが、実は4輪自動車の4輪をちゃんと真っ直ぐ走るように左右均等荷重で接地させることや、様々な路面の凹凸や傾斜地があっても4輪の接地性が維持されるように設計することは、車体の剛性や弾性、共振特性など多様な要素解析が必要になり、設計は高度なノウハウであり、かんたんに台車にエンジンと座席というわけには行かないということです。
2つ目ですが、人の命に関わる規制を緩和させることは容易ではないということがあります。シティコミュータとしての超小型モビリティ事業がありましたが、そこで安全性に関わる強度条件の緩和がありましたが、それでも2人乗りの軽自動車扱いのものは、既存の軽トラックなどに比してとても採算がとれるような価格にはなりませんでした。時速5kmを越える4輪自動車の新たな規格はできそうもありません。超小型モビリティでもそうなのですから、軽自動車以上の車の新規開発は困難さがつきまといます。

ベンチャーの電気自動車への道

このような規制をベンチャーが自力で克服することは困難であり、高いハードルへの資本注入は非効率ですので、他社から技術導入するか、何らかの規制緩和の手段を探すかの対策が必要でしょう。
まず、技術導入については、現在の軽自動車以上の規格を実現するためには最低限フレームかシャーシの購入か能力次第では設計ソフトの導入が必要でしょう。シャーシやフレームは開発能力がある企業に依頼し、ベンチャーはあくまでも運用の構想と構想に適合したヒューマンインタフェースやソフトウェアに注力することが効率的な構想実現の方策でしょう。
次の規制緩和ですが、構想する自動車システムがシティコミューターなどで性能や規格が超小型モビリティで適合可能ならば、構想に適合する規制のゆるい超小型モビリティを設計し、地方自治体と共同事業で、特区を設定してもらい、高齢者用の移動手段、ガソリンスタンド廃止対策、観光用カートなどとして立ち上げることもあり得るでしょう。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

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