『空飛ぶ自動車』青山先端技術研究所/エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

あえて自動車と呼ぶ意味

空飛ぶ自動車というとその意味することが2種類あります。一つは文字通り、普段使っている自家用車が、渋滞などで道路が塞がり全く進まくなった時に、車体から翼が伸びて、天井からエンジンポッドが飛び出し、プロペラが伸びて飛行機の形になり、道路を滑走路にして空中に飛び上がるという007ボンドカー的な意味です。
もう一つは、自家用自動車の飛行機版として思いつく、タイヤや車体などの形状はおろか自動車という地上走行機能にさえこだわらず、自動車という言葉の意味を単に個人が普通に所有でき、通勤や買物などの日常の生活に時刻表を気にせず気軽に使える、自分で苦労して漕がなくてもいい動力を持った移動手段という利便性に対し、自動車という言葉に保たせているもので、つまり手軽に個人所有ができる飛行機という意味に過ぎないというものです。

自動車が中々飛べないわけ

前者の、普通に道路を走行する自動車に空を飛ばせるというのは、実は非常に非効率なやり方です。それは、現在の自動車に要求されている機能性能が、飛行機の基本的要素と大きく矛盾するものだからです。普段、普通に自動車を使っていると、自動車はレゴブロックのように、単なる人が乗る箱である車体に車輪とエンジンを付けただけのもので、車体自体には簡素な機能と構造しか無く、何か別の機能を付加すれば、様々な機能が付加できるもののように思ってしまいます。
●自動車とはどういうものか
しかしながら、誕生から100年を経て、自動車は自動車の用途を究極まで追及したものに進化しています。自動車は人や荷物を速く、安全確実かつ快適に目的地に移動させるという機能を目的としたものですが、その機能を追及した結果、それなりに自動車の使用環境に特化した構造になってしまっています。その追求の主体は車体構造の強度剛性です。高速でカーブを曲がっても歪まない強さはあるが、その間でも4輪が継続的に接地するような柔軟性はあるという剛性、また2トン近い2台が相対速度が300km衝突しても搭乗者が守れ、逆に歩行者に対しては壊滅的衝撃を与えないという強度が優先特化される機能になります。
●飛行機とはどういうものか
空を飛ぶという機能は、持ち上げる機能体である回転翼を含む翼に、持ち上げたい荷物や人を乗せる籠を吊り下げられるような構造になっています。そしてその構造に付加する機能として何よりも重要なものは軽量化構造です。その軽量化構造の条件は、飛行機の期待が飛行中に触れるものは柔らかい空気と水(雨)であって、衝撃も荷重も地面よりもかなり小さく変化が急激ではないというなります。それにより強度剛性のレベルを下げられ、結果として軽量化が図られ、簡単に飛び上がれる能力を得られたと言えます。

空飛ぶ自動車の形

このことから、まともな自動車は重くてとても浮き上がらないし、簡単に飛び上がれる飛行機は強度剛性が不足して、安全性は別にしても、地上では凸凹道や急カーブなどは、とてもまともな速度では走れないということになります。つまり空飛ぶ自動車とは、工業的にいって、後者の地上走行機能を持たない軽量飛行機しかありえないというになります。簡単に行ってしまうと大型のドローンです。
小型ドローンの多くが回転翼なのは、滑走してある程度の速度獲得が必要な固定翼と比較して、回転翼のほうが回転することで揚力に必要な翼の対気速度を得ているので、常時確実に揚力は得られるからです。好きな場所で浮き上がって好きな場所に降りるためには回転翼に帰結することになります。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

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