『フードロスと飢餓の関係性』青山先端技術研究所/エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

フードロス防止で飢餓から救おう

日本は700万トンの食品が廃棄されており、この量は飢餓に悩む人に不足している食品量とほぼ同数と言われている。ここから、フードロスを無くし、飢餓を防ごうという運動がみられる。

フードロス対策とは何か

フードロス対策として供給側、消費側それじれに対策が言われている。供給側では、過剰な消費期限設定の見直し、販売可能な量だけを仕入れて廃棄を出さないで、余剰になりそうな食品は消費期限に余裕をもって食糧支援に供与する。消費者側では、長期保存可能なものは除き余剰の食品は購入せず、食べ残しがないような食事量にする、などが言われている。

フードロス防止で起こりこと

フードロスとは何かというと、過剰生産であり過剰消費である。
ということは、フードロス対策とされるものは、食品の生産量の削減と消費量の削減であり、これはとりもなおさず生産者の出荷量の削減、小売業の販売量の削減、消費者による食品購入の制限に他ならない。
あまり示されていないが、このロス量は少く食品流通量の4%に過ぎない。しかしながら食品の製造、流通、小売りそれぞれに波及する削減でありその影響は少なくない。
経済では購入されない商品の製造はしない。それは農業生産、食品加工、小売り、外食などがその分の価値製造を低下させる。生産者、小売り、消費者が以前のままの所得を維持するためには、価値製造の低下分は残った食品の価格に転嫁させなくてはいけない。
その結果として食品単価が上昇することになり、低所得者が食品入手がその分困難になる可能性がある。

飢餓の原因

大体、飢餓の要因は先進国による食料の収奪にあるのでしょうか。実は、その国に食料がないということは理由がある。もともとほとんどの国は食料は自給できていた。自給できない国は他の産業利益により他国から購入できていた。そうでなければ歴史の中で消滅していたはずだからである。できていたものができなくなったということは、行政の失敗で政治問題である。多くの場合内戦や革命、権力闘争での農地所有の暴力的収奪や灌漑インフラの崩壊での農地の荒廃したことで農民が流民化したことによる。農業生産者の流民化、難民化なので国内どこに行っても食料は得られず飢餓になる。また、紛争地にはNGOは入れないし、政府や軍、警察が機能していないので支援物資が届くルートはない

農業の要素

農業は産業の基本であり、世界中で普通に収穫されているから簡単に思われるが、実はなかなか難しい産業である。どのような作物でも10日間水供給がなかったら生産量は激減し、10日間日照がなかったら冷害が発生するという不安定なものです。それを可能にしたのは2000年にわたって各地で先人が行った灌漑インフラで水が確保され、水温上げることができるようになったためです。つまり、インフラなしでの農業はあり得ないということです。

● 農業インフラの抗たん性
農業インフラのすごさは日本やバリ島などの棚田を見るとよくわかります。石を積み上げて棚を作り、棚から棚へと満遍なく水を回し、排水量と貯水量をコントロールして水温を安定化させる機能もあります。毎年の積み上げで複雑なシステムを完成させています。つまり、人々が普通に景色としてみている川や湖、里山、平地林など全てが農業インフラなのです。地球上の殆どの人間は農業インフラの上に生活しているのです。

● 農業の生産性
限られた食料のという概念も農業を知らない人の考えです。例えばコメは1粒から20本の茎が出てそれに50粒の穂がなります。つまり1粒は1600粒になる産業であり、対しとうもろこしは600粒ですが速やかに1m以上に成長し雑草の影響を受けないという耐性があります。また畜産は人間が食べられないセルロースをタンパク質の食肉に変換する産業です。適正な価格を維持できる環境とインフラさえ整えば何処でも自給できる産業です。

フードロスと飢餓を結びつけるもの

フードロスと飢餓を関係づけているのは、片側で消費されない食品があり、もう片方で食品が得られず栄養不良の人がいるという事実だけであり、この2点を結びつけるものは、印象であり感情でしかない。
一方でフードロス削減で起こる経済縮小や、価格上昇の可能性は思い浮かばないという現状は認識されない。このような運動が、飢餓について最も効果的な当該国政府への国際的非難が正しくなされているとは言えない。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

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