『DXデジタル・トランスフォーメーション』青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー 中嶋隆一

 

DXとデジタライゼーション

DXを組織や企業のシステムのAI、IT、IOT化と考えることの問題はどこでも指摘されています。IT化やIOT、AIの導入はあくまでもオフィスやシステムのデジタライゼーションであってDXの主体であるトランスフォーメーションとは言い難い変化だからです。確かにITによってペーパーレスやテレワークが実施されれば業務環境は変化しますが、それは事務作業が変わっただけで組織編成用語としてのトランスフォーメーションの意味である再編、あるいはより一般的な構造変化とはとても言えないレベルでしょう。

トランスフォーメーション

・構造変化とはなにか
継続する組織には常にいくつかの変化の圧力がその内外に存在します。社会の常識や行動規範、行動原則が変化したことにより社会て存在である組織がそれに適合しなくてはいけない社会的変化圧力。
組織自体が成長や多角化、併合などにより、組織の規模や構造が変化したことにより、従来の組織形態では意思疎通や情報共有が低下するための能力低下に対抗する必然が生じる構造的変化圧力
技術の発展により組織を維持しているシステムが陳腐化して、競合や協業するたの組織のシステムと連携が取りにくくなり、業務の支障が生じる技術的変化圧力などがあります。

・圧力への対応不全要因としての組織
これらの圧力は拒否することは組織の安楽死を意味します。組織が維持されるためには圧力に応じた変化が必要になってきます。しかしながら、ただ圧力の発生箇所を変形させて適合させることは健全とは言い難い対処であることは明らかです。

組織の存在価値

・社会的意義としての組織
組織には目的があり、それは組織が果たす役割であるという言い方もできますが、日本では歴史的に組織や企業を設立する場合にはその理想を掲げます。そうでなくても公的組織ならもちろんですが、一般企業でも設立の理念を要求されることが普通です。多くの場合その業務の遂行によって社会に貢献することを理念にします。
・構成員の自己実現的ツールとしての組織
それ以外にも日本の企業はその構成員を幸福にするという目的があります。その目的として企業は構成員の自己の実現を支援できるシステムでなくてはいけません。

・利益資産の合資としての組織
労働資源や資本を合資し事業資産を形成するための組織の存在意義もあります。

・理想実現の障害としての既存組織
組織は常にその目的を阻害する要因に直面しています。既存の組織体制や組織インフラが情報不足や人材不足、設備不足、資金不足などにより理想とする行動ができないことが通常です。

組織改革ツールとしてのデジタル

組織はその機能を最適にするために常時変化をするべきものでしょう。従来では各種の障害により簡単には実行できない構造変化がデジタル技術によって可能になる可能性が出てきました。それによって各組織は、自らの存在理念に立ち返って可能な構造変化を再検討する必要があるということです。
現在の組織が、柔軟できめ細かい利用者対応、公平迅速な組織決定、が適宜適切な組織構成員の能力のフィッティングができているかを検討し、それらが驚異的に向上するツールであるITシステムが存在するか、組織のアーキテクチャーが適合可能な領域にあるかを検討し、それに必要な組織教育、組織合意、経費準備を含めた組織改編とシステム開発を実行することではないでしょうか。
そのためには改変の帰着点が確固としていなくてはならないので、組織のトップが組織の理念を明確に認識できているかどうかが重要になります。

【執筆者プロフィール】
中嶋 隆一 Ryuichi NAKAJIMA
EPIC Partners株式会社 監査役。青山先端技術研究所・エグゼクティブフェロー。文筆家。
防衛省で31年間勤務し、研究開発業務に従事。定年退職後は、先端技術の研究・コンサルティング、大手企業のCVCのアドバイザーボード、公共領域のコンサルティング支援を行う。
誘導武器開発官付及び先進技術推進専門官、防衛省幹部学校において技術教育教官の経験を活かして、経営者・先端技術研究者等へのコーティングも行う。航空機搭載の電子とミサイルのスペシャリストとして、執筆、講演、セミナー等を幅広く実施。

記事一覧へ

この記事をSNSでシェア!